派遣で働くと言ったら、家族に止められた。そういう人が読むページになる。
反対している側が心配しているのは、たいてい3つになる。収入、社会保険と年金、そして将来になる。3つとも制度で答えが出るので、感情の話にせずに済む。
心配そのものは、もっともなことになる。答えるべきは「わかってほしい」ではなく、聞かれていることのほうになる。
心配① 収入が不安定なのでは
契約の期間中は、その契約が続く
働く条件が、始まる前に書面で決まる。
派遣会社は派遣をする前に、就業条件を本人に明示しなければならない(派遣法34条1項)。就業の日、始業・終業の時刻、契約の期間が、そこに書かれる。
「今月は仕事がありません」が突然来る形にはなっていない。 契約の期間中は、その契約が続く。
賃金には下限がある
| 方式 | 何と比べるか |
|---|---|
| 労使協定方式 | 国が毎年示す一般賃金の額。これ以上でなければならない |
| 派遣先均等・均衡方式 | 派遣先で同じ仕事をしている人の待遇 |
「派遣だから安くていい」という形が、条文の側に無いことになる。
次の仕事は探しやすい
仕事の数そのものが多い。
| 職業(令和8年3月) | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 介護サービスの職業 | 3.63 |
| 社会福祉の専門職業 | 2.69 |
| 保健師・助産師・看護師 | 2.12 |
| 職業計 | 1.10 |
| 一般事務 | 0.37 |
介護は求職者1人に3.63件の求人がある。 全職業の平均は1.10になる。契約が終わっても次を探しやすい、というのがこの数字の意味になる。
この数字は介護の職業全体のもので、派遣の求人だけを数えたものではない。地域や希望のシフトで見れば、また違う。「探しやすさ」の目安として見る。
正直に言う部分
シフトが減れば、収入も減る。 月給ではなく時給なので、働いた時間のぶんになる。
この点は反対する側が正しい。 「絶対に減らない」とは言えないので、減った月にどうするかまで話すほうが早い。
心配② 社会保険や年金が無いのでは
制度の答え
要件を満たせば入る。雇用形態では決まらない。
| 要件 | 条文 | |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 週20時間以上 + 31日以上の雇用見込み | 雇用保険法6条 |
| 健康保険・厚生年金 | 週20時間以上・月8.8万円以上・学生でない・2か月を超えて使用される見込み + 派遣元が51人以上 | 健保法3条1項9号/厚生年金保険法12条 |
「派遣だから入れない」という規定は無い。 条文は働き方の要件で書かれている。
厚生年金に入るということは、将来の年金にも反映されることになる。国民年金だけの場合と比べて、その分が上乗せになる。
「2か月以内の契約だから入れない」も、いまは違う(更新する見込みがあれば当初から入る)。詳しくは社会保険の記事で扱っている。
入れば保険料が引かれるので、そのぶん手取りは減る。また、配偶者の扶養から外れることがある。家族手当が付いている場合はそちらにも関わる。詳しくは扶養の記事で扱っている。
正直に言う部分
短い時間だけ働くなら、入らない。 これは派遣かどうかではなく、働く時間の話になる。パートでも同じことになる。
雇用契約が終われば、原則として資格を失う。次の派遣までに空白があれば、その間は国民健康保険・国民年金に切り替わるのが原則になる。
心配③ 将来が続かないのでは
まず、当たっている部分
有期雇用の派遣では、同じ組織単位(課など)で働けるのは原則3年までになる。対象外になる働き方もある(無期雇用派遣、60歳以上、有期プロジェクトの業務、日数が限られた業務、産前産後・育児・介護休業の代替)が、普通に登録して働く形なら当てはまる。
ここは反対する側が正しい。 ごまかさずに認めたほうが、話が前に進む。
派遣会社の側に義務がある
3年で終わりになるわけではない。
同じ組織単位で3年働く見込みがあり、派遣が終わったあとも働き続けることを希望している人には、派遣元が次のどれかを講じる義務がある(派遣法30条2項の読み替え)。
| # | 措置の中身 |
|---|---|
| 1 | 派遣先に対し、直接雇用をするよう求める |
| 2 | 別の派遣先を用意する(能力・経験に照らして合理的な条件のもの) |
| 3 | 派遣元で派遣以外の働き方で雇う |
| 4 | その他、雇用の安定を図るために必要な措置 |
これを雇用安定措置という。「働き続けたい」と希望していることが条件になり、黙っていると対象にならない。詳しくは雇用安定措置の記事で扱っている。
自分から選べる道が2つある
| 道 | 中身 |
|---|---|
| 無期雇用派遣 | 派遣元と期間の定めのない契約を結ぶ。3年の期間制限の対象から外れる |
| 紹介予定派遣 | 直接雇用を予定して行う派遣(最長6か月)。面接ができる。切り替わるかは双方の合意による |
「派遣に入ったら、ずっと派遣」ではないことになる。
家族に見せるなら、この3つだけ
| 聞かれること | 答え |
|---|---|
| 仕事が急に無くなるのでは | 契約の期間が先に書面で決まる。介護の有効求人倍率は3.63(全職業は1.10) |
| 社会保険や年金は | 週20時間以上など要件を満たせば入る。厚生年金は将来の年金に反映される |
| ずっとは続かないのでは | 有期雇用なら同じ課で原則3年まで。ただし希望すれば派遣元に雇用安定措置の義務があり、無期雇用と紹介予定派遣という道もある |
この表で答えられない反対が残るなら、それは制度の話ではない。
制度で答えられないもの
賞与と退職金の出方は、派遣会社と待遇の方式で違う。 労使協定方式の退職金には3つの方法があり、時給に含まれる形(5%を上乗せ)も、退職手当制度として別に出る形もある。どれを採っているかは労使協定に書いてある。
ただし、賞与が年2回まとまって出る職場と年収で比べると、逆転しうる。ここは反対する側の心配が当たる場面になる。
「安定していないから心配」という気持ちそのものには、制度は答えられない。 答えられるのは、何がどこまで決まっているかまでになる。
そのうえで判断するのは本人になる。何を優先すると派遣になるかは、別の記事で扱っている。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条(雇用安定措置。第1項=努力義務、第2項=義務)、第30条の3(派遣先均等・均衡方式)、第30条の4第1項第2号イ(労使協定方式=一般賃金の額と同等以上)、第34条第1項(就業条件等の明示)、第40条の2(派遣可能期間の制限=3年)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 健康保険法 第3条第1項第9号(短時間労働者の適用要件)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 - 厚生年金保険法 第12条(適用除外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 雇用保険法 第6条(適用除外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 - 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」参考統計表(職業別の有効求人・有効求職・有効求人倍率。常用=パート含む)(2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001695527.pdf


