トップ / 読みもの / 登録する前に

登録する前に

「派遣はやめとけ」は本当か——5つのうち3つは、もう当てはまらない

編集部公開 2026年8月25日

派遣で働こうとして、止められた。そういう人が読むページになる。

先に答えを書く。「やめとけ」と言われる理由は5つある。そのうち3つは、いまの介護・医療の派遣には当てはまらない。残る2つは本当に当てはまる。 だから、その2つが自分にとって重いかどうかだけで決めればいい。

言われる理由は5つ 当てはまらない 3つ 仕事がなくなる 製造業で起きた話 時給が安い 下限が法律で決まる 社会保険がない 要件を満たせば入る 当てはまる 2つ 賞与・退職金がない 同じ職場に3年の期限 決めるのは、この2つが重いかどうかだけ 2つとも重いなら、直接雇用のほうがいい
5つの理由のうち、3つは当てはまらず、2つは当てはまる。

言われる5つの理由

#言われること当てはまるか
1仕事がなくなる(派遣切り)当てはまらない
2時給が安い当てはまらない
3社会保険がない当てはまらない
4賞与・退職金がない当てはまる
5同じ職場に3年の期限がある当てはまる

1〜3は、別の時代の別の業界の話が混ざっている。次で出どころを示す。

1. 「仕事がなくなる」——それは製造業の話

「派遣は不安定」というイメージには、はっきりした出どころがある。2008年から2009年にかけて、製造業の派遣が一気に消えたことになる。

数字が残っている。

各年6月1日時点全派遣労働者うち製造業務製造業務の割合
平成18年167万人24万人14.4%
平成19年184万人47万人25.3%
平成20年202万人56万人27.6%
平成21年157万人25万人16.2%
平成22年145万人24万人16.7%
平成23年137万人26万人19.1%

(労働者派遣事業報告。厚生労働省の研究会資料より)

製造業務の派遣は、1年で56万人から25万人になった。 資料の本文も「平成20年に約56万人でピークとなった後、平成21年にほぼ半減し」と書いている。全体でも202万人から157万人へ、45万人減っている。

当時の雇止めの集計も残っている。

派遣又は請負契約の期間満了、中途解除による雇用調整及び有期契約の非正規労働者の期間満了、解雇による雇用調整について、昨年 10 月から本年6月までに実施済み又は実施予定として、5月19日時点で把握できたものは、全国で3,536事業所、約21万6千人となっている。

(厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況について(5月報告:速報)」平成21年5月29日)

そのうち「派遣」が62.4%(135,065人)を占めている。これが「派遣切り」という言葉が広まった場面になる。

なぜ介護・医療では、同じことが起きないのか

構造が逆になっているからになる。

工場は、受注が消えると仕事そのものが消える。だから人がまとめて要らなくなる。介護・医療は、利用者や患者が減って仕事が消えるという形になっていない。むしろ人が足りていない。

いまの数字を出す。

職業(令和8年3月・常用/パート含む)有効求人有効求職有効求人倍率
職業計2,073,0131,888,7881.10
介護サービスの職業191,33052,7573.63
保健師・助産師・看護師100,56747,5032.12
社会福祉の専門職業123,28645,7722.69
生産工程の職業199,913127,0551.57
一般事務149,809409,9370.37

(厚生労働省「一般職業紹介状況」参考統計表。有効求人倍率=有効求人÷有効求職)

介護は求職者1人に3.63件の求人がある。 全職業の平均は1.10、一般事務は0.37になる。

この差が「仕事がなくなる」への答えになる。一般事務は求職者3人に求人1件なので、契約が終われば次を探すのに時間がかかる。介護はその逆になる。

これは求人の数の話であって、自分の希望どおりの職場が必ず見つかるという意味ではない。

2. 「時給が安い」——下限が法律で決まっている

派遣の賃金の決め方は、法律で2つに限られている。どちらを採っても、比べる相手が決まっている。

方式何と比べるか条文
労使協定方式(派遣元が労働者の過半数代表と結ぶ協定で決める)国が毎年示す一般賃金の額。これ以上でなければならない法30条の4第1項2号イ
派遣先均等・均衡方式派遣先で同じ仕事をしている人の待遇法30条の3

「派遣だから安くていい」という形が、条文の側に無いことになる。決め方の中身は労使協定方式の記事で扱っている。

「時給が高い」とも書かない。 年収で見ると次の4番で逆転しうるからになる。

3. 「社会保険がない」——要件を満たせば入る

社会保険に入るかどうかは、雇用形態ではなく要件で決まる。派遣だから入れない、という仕組みにはなっていない。

要件
雇用保険週20時間以上 + 31日以上の雇用見込み
健康保険・厚生年金週20時間以上・月8.8万円以上・学生でない・2か月を超えて使用される見込み + 派遣元が51人以上であること

「2か月以内の契約だから入れない」も、いまは違う(契約を更新する見込みがあれば当初から入る)。詳しくは社会保険の記事で扱っている。

当てはまらないのは「短い時間だけ働く場合」になる。これは派遣かどうかではなく、働く時間の話になる。

4. 「賞与・退職金がない」——これは当てはまる

ここからは、ごまかさずに書く。

派遣で、賞与や退職金が直接雇用と同じように出る形は、基本的にない。

時給だけを比べると派遣のほうが高く見えることが多い。だが年収で比べると逆転しうる。賞与が年2回出る職場と比べるなら、その分を時給の差が埋められるかどうかになる。

直接雇用(正職員)派遣
賞与原則なし
退職金原則なし
昇給原則なし(能力・経験の区分が上がれば下限は上がる)
時給高いことが多い

ただし退職金だけは、労使協定方式のなかに扱いが組み込まれている。 3つの方法があり、そのうち1つが時給に上乗せする形になる。

方法中身
①派遣元の退職手当制度と、一般の退職手当制度を比べる
②一般基本給・賞与等に5%を乗せた額を、退職金の分とする
③中小企業退職金共済制度等に加入し、同じく5%を乗せる

「時給に退職金の分が入っている」と言われたら、②かどうかを労使協定で確かめる。 ②なら、上乗せは5%という決まった率になる。詳しくは労使協定方式の記事で扱っている。

「賞与がない代わりに時給が高い」は、得でも損でもない。 働く時間が安定していれば年収で並び、シフトが減れば負ける。分かれ目は勤務時間の安定になる。

5. 「同じ職場に3年の期限がある」——これも当てはまる

同じ派遣先の同じ課で働ける期間には3年の上限がある。気に入った職場でも、そのままでは働き続けられない。

これは制度としてそう決まっているので、会社を選んでも避けられない。

期限は2つある。 同じ人が同じ課で働ける3年(個人単位)と、同じ事業所が派遣を受け入れられる3年(事業所単位)になる。先に来たほうで終わるので、入って1年で期限が来ることもある。詳しくは3年ルールの記事で扱っている。

避ける道はある(無期雇用に変える、紹介予定派遣で直接雇用に移る、雇用安定措置=3年になる人に派遣元が次の手を打つ義務、を使う)が、どれも「そのまま同じ形で続ける」ではない。

決め方

4と5だけを見て決める。

質問はいいいえ
賞与・退職金が無いのは困るか直接雇用のほうがいい次へ
同じ職場で3年より長く働きたいか直接雇用のほうがいい次へ
勤務時間が減る月があっても耐えられるか派遣が向く直接雇用のほうがいい

2つとも「困る」なら、派遣はやめたほうがいい。 そのほうが読者にとって早い。

1〜3を理由に止められているなら、この記事の数字を見せれば話が早い。

出典

  • 厚生労働省「第8回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」(平成25年2月12日)資料3「関係資料」(派遣労働者数の推移③=製造業務に従事した派遣労働者。労働者派遣事業報告・各年6月1日時点)(2026年8月25日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002v252-att/siryou03.pdf
  • 厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況について(5月報告:速報)」平成21年5月29日(3,536事業所・216,408人。派遣135,065人=62.4%)(2026年8月25日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/dl/h0529-3a.pdf
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」参考統計表(職業別の新規求人・有効求人・新規求職・有効求職・求人倍率。常用=パート含む)(2026年8月25日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001695527.pdf
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条の3(派遣先均等・均衡方式)、第30条の4第1項第2号イ(労使協定方式=一般賃金の額と同等以上)、第35条の3・第40条の2(派遣可能期間の制限=3年)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
  • 雇用保険法 第6条(適用除外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
  • 健康保険法 第3条第1項第9号(短時間労働者の適用要件)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070

あわせて読む

会社によって、扱う仕事も条件も違う

職種・エリア・働き方でしぼって、掲載している会社を見られます。

条件から派遣会社を見る

無資格から働ける会社資格の費用を会社が負担する会社紹介予定派遣を扱う会社

← 読みものの一覧へ