3年で職場を離れることになったとき、そのまま終わりではない。派遣会社がすべきことが法律で決まっている。
これを雇用安定措置という(労働者派遣法第30条)。
知られていないので、使われていない制度になる。会社から言われるのを待つのではなく、こちらから動ける。
誰が対象で、どこまでが義務か
3つに分かれる。
| あてはまる人 | 会社の義務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 同じ組織単位で3年働く見込み | 義務(講じなければならない) | 法30条2項の読み替え |
| 同じ組織単位で1年以上働く見込み | 努力義務(講ずるように努めなければならない) | 法30条1項 |
| 同じ組織単位で1年未満でも、その派遣会社に通算1年以上雇われている有期の人 | 努力義務 | 法30条1項/施行規則25条3項 |
条文の言葉が変わるだけだが、意味は大きく違う。3年見込みならやらなければならないことになる。
そして3つに共通する前提が2つある。
1. 有期雇用であること(無期雇用派遣は対象外)
2. 派遣が終わったあとも働き続けることを希望していること
対象外になるのは、期間制限がかからない働き方になる(法40条の2第1項各号)。無期雇用派遣、60歳以上など、有期プロジェクトの業務、日数が限られた業務、産前産後・育児・介護休業の代替がこれに当たる。
「働き続けたい」と言っておく
施行規則が条件を定めている。
派遣先の事業所その他派遣就業の場所(略)における同一の組織単位の業務について継続して一年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある者であつて、当該労働者派遣の終了後も継続して就業することを希望しているもの
(派遣法施行規則第25条第1項)
「終了後も働きたい」と希望していることが条件になる。黙っていると対象にならない。
継続就業の希望は、会社が確認する
聴くタイミングも決まっている。
前項の派遣労働者の希望については、派遣元事業主が当該労働者派遣が終了する日の前日までに当該派遣労働者に対して聴くものとする。
(同条第2項)
聴くのは会社の側の義務になる。聴かれないまま終わったなら、それ自体がおかしい。
通算1年以上でも対象になる
法第三十条第一項のその他雇用の安定を図る必要性が高いと認められる者として厚生労働省令で定めるものは、当該派遣元事業主に雇用された期間が通算して一年以上である有期雇用派遣労働者(略)とする。
(同条第3項)
同じ組織単位で1年に満たなくても、その派遣会社に通算1年以上雇われていれば対象になる。職場が変わっていても、派遣会社が同じなら通算される。
4つの措置
条文が挙げているのは、次の4つになる(法30条1項各号)。
| # | 中身 |
|---|---|
| 1 | 派遣先に対し、直接雇用(労働契約の申込み)をするよう求める |
| 2 | 別の派遣先を用意する(条件が能力・経験などに照らして合理的なものに限る) |
| 3 | 派遣以外の形で、期間を定めずに雇用する機会を確保して提供する |
| 4 | 教育訓練など、雇用の安定に資する措置 |
4の教育訓練には条件がある
法第三十条第一項第四号の厚生労働省令で定める教育訓練は、新たな就業の機会を提供するまでの間に行われる教育訓練(当該期間中、特定有期雇用派遣労働者等に対し賃金が支払われる場合に限る)とする。
(施行規則第25条の4)
無給の研修は、措置として認められない。賃金が支払われることが条件になる。
4にはもう1つ、紹介予定派遣の対象にすることも含まれる(施行規則25条の5第2号。派遣会社が職業紹介の許可か届出を持っている場合)。
直接雇用の依頼が実らなかったとき
3年見込みの場合、施行規則にこう書かれている。
同項第一号の措置が講じられた場合であつて、当該措置の対象となつた特定有期雇用派遣労働者が当該派遣先に雇用されなかつたときは、同項第二号から第四号までのいずれかの措置を講じなければならない
(施行規則第25条の2第2項)
「派遣先に直接雇用を頼んだが、断られた」で終わりにできない。その場合は、2〜4のどれかを講じる義務が残る。
ここが最も知られていない部分になる。「頼んでみましたがダメでした」と言われたら、次の措置を求められる。
どの措置がいいかも、聴かれる
派遣元事業主は、(略)措置を講ずるに当たつては、特定有期雇用派遣労働者等から、当該特定有期雇用派遣労働者等が希望する当該措置の内容を聴取しなければならない。
(施行規則第25条の2第3項)
どの措置がいいかを、本人に聴かなければならないことになる。会社が勝手に選んでよいものではない。
だから「直接雇用を目指したい」「別の職場でよい」といった希望は、先に伝えておくことになる。
出される仕事には条件がある
2の「別の派遣先を用意する」を選ぶ場合、出す仕事の条件に制限がある。条文は「その条件が、(略)能力、経験その他厚生労働省令で定める事項に照らして合理的なものに限る」と書いている(法30条1項2号)。
その「省令で定める事項」がこれになる。
特定有期雇用派遣労働者等の居住地、従前の職務に係る待遇その他派遣労働者の配置に関して通常考慮すべき事項
(施行規則第25条の3)
通えない場所や、待遇が大きく下がる仕事を出しても、措置を果たしたことにならないという組み立てになる。
いつ、何を言うか
| 時期 | すること |
|---|---|
| 満了の数か月前 | 「終了後も働き続けたい」と伝える |
| 希望を聴かれたとき | どの措置を希望するかを答える(1〜4のどれか) |
| 1が実らなかったとき | 2〜4のどれかを求める(3年見込みの場合は義務) |
| 動かないとき | 労働局の需給調整事業を担当する窓口に相談する(下記) |
遅くとも、派遣が終了する日の前日までには聴かれることになっている。それが無いまま終わりそうなら、こちらから言う。
措置が講じられないとき
3年見込みの義務に違反した場合、条文に専用の道筋が置かれている。
1. 厚生労働大臣が指導または助言をする(法48条1項)
2. それでもなお違反したときは、必要な措置をとるべきことを指示できる(法48条3項)
この義務違反は、改善命令(法49条1項)の対象からは明文で外されている。代わりに置かれているのが、上の「指示」になる。
実際の窓口は、都道府県労働局の需給調整事業を担当する部署になる。「1年以上働く見込みで、終了後も働きたいと伝えたのに、何の措置も示されない」という形で相談できる。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条(雇用安定措置。第1項各号=4つの措置、第2項=3年見込みの場合の読み替え)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 同法 第48条第1項・第3項(指導及び助言、指示)、第49条第1項(改善命令。雇用安定措置の義務は対象から除外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第25条(対象者=1年以上の見込みかつ継続就業を希望する者、希望を聴く時期、通算1年以上の者)、第25条の2(措置の実施方法、1号が実らない場合、希望の聴取)、第25条の3(合理的な条件=居住地・従前の待遇)、第25条の4(有給の教育訓練に限る)、第25条の5(紹介予定派遣の対象とすること)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020


