連絡が返ってこない。聞いたことが派遣先に伝わっていない。話が噛み合わない。
こういうとき、多くの記事は「担当者の変更を頼みましょう」と書く。それも手ではあるが、その前に使える仕組みが法律で用意されている。
ふだんの連絡相手と、制度上の窓口は別
営業担当は、あなたに仕事を紹介する人になる。法律上の役職ではない。
それとは別に、苦情を受ける役割の人が決められている。
| 役割 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 派遣元責任者 | 派遣会社が選ぶ。苦情の処理に当たることが職務に入っている | 労働者派遣法第36条第3号 |
| 派遣先責任者 | 派遣先が選ぶ。同じく苦情の処理に当たるのが職務 | 同法第41条第3号 |
営業担当が派遣元責任者を兼ねていることもある。それでも役割としては別になる。
名前と連絡先は、手元の書面にある
就業開始前に、働く条件を書いた書面(就業条件明示書)を受け取っている。そこに苦情の申出先として、派遣元・派遣先それぞれの担当者名と連絡先が書かれている。
見つからないときは、別紙になっていないか、電子で受け取っていないかを確かめる。それでも無ければ、派遣会社に「苦情の申出先はどこですか」と聞く。

どちらに言うか
問題の出どころで決まる。
| 何が起きているか | 先に言う相手 |
|---|---|
| 連絡が遅い、話が伝わっていない、条件の説明が違う | 派遣元(派遣会社側) |
| 契約に無い業務を頼まれる、職場での扱い、就業環境 | 派遣先(または両方) |
迷ったら派遣元でよい。派遣先の話でも、派遣会社を通して伝えることになるため。
苦情を言われた側には、義務がある
派遣就業に関する苦情の申出を受けたとき、派遣先がすることは条文で3つに分かれている(同法第40条第1項)。
- 苦情の内容を派遣会社に通知する
- 派遣会社と密接に連携する
- 誠意をもって、遅滞なく、適切かつ迅速に処理を図る
条文の言葉が強い。「努める」ではなく「しなければならない」になっている。
つまり、我慢するか担当を変えるかの二択ではない。派遣就業に関する苦情なら、言えば動かす仕組みがある。
何を伝えるかで結果が変わる
窓口に言うとき、起きたことを伝える。感じたことだけでは動きにくい。
| 動きにくい言い方 | 動きやすい言い方 |
|---|---|
| 連絡が遅い | ◯月◯日に質問して、◯日経っても返答がない |
| 話が伝わっていない | 休みの希望を伝えたのに、派遣先に伝わっていなかった |
| 態度が合わない | 契約に無い業務を頼まれ、担当に相談したが対応がない |
そしてどうしてほしいかを添える。「いつまでに返答がほしい」「派遣先に伝え直してほしい」「担当を替えてほしい」。着地点があると、相手も動きやすくなる。
日付とやりとりを残す。メールやアプリの履歴があれば、そのまま材料になる。担当者を責めるためではなく、同じことが繰り返されない形にするためになる。
窓口が、その担当者自身だったら
苦情の申出先が、まさに合わない担当者になっていることがある。その場合は、
1. 会社の代表の問い合わせ窓口に連絡する
2. 上長に取り次いでもらう
3. 派遣先の窓口(派遣先責任者)に言い、派遣会社に伝えてもらう
派遣先に言えば、派遣先から派遣会社に通知が行く(第40条第1項)。担当者を経由しない経路になる。
担当を変えてもらう
窓口に言っても変わらないなら、担当の変更を頼むことになる。頼む先は担当者本人ではなく、上長か会社の窓口になる。
変更が通るかは会社による。法律に「担当者を変える義務」は無い。ここは会社の対応の差になる。
苦情を出したあとに扱いが変わったら
苦情を言ったことを理由に、仕事の紹介が減った、契約を更新しないと言われた、という場合は、やりとりの記録を残したうえで外の窓口に相談する。
社内で解決しようとして時間だけが過ぎることがある。ここは早めに外に出す。
変えても解決しないとき
担当が替わっても直らないなら、担当個人ではなく会社の仕組みの問題になる。
- 連絡の遅さが担当を替えても変わらない
- 苦情の申出先を聞いても、はっきり答えが返ってこない
- 派遣先での問題を伝えても、派遣先に話が行かない
この場合は会社を変えるほうが早い。契約の満了で終えて、別の会社に登録し直す形になる。複数の会社に登録しておくと、この判断がしやすい。
ただし、ハラスメントや安全に関わることは、満了を待たない。下の窓口に先に相談する。
外の窓口
- 都道府県労働局の需給調整事業部(課)=労働局のうち、派遣事業を扱う部署。苦情処理が行われない、責任者が機能していないなど、派遣法に関わること
- 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署内)=あらゆる労働問題の入口。無料
- 労働基準監督署=賃金や労働時間など、労働基準法に関わること
苦情処理の仕組みが動かないこと自体が、派遣法に関わる話になる。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第36条(派遣元責任者。第3号=苦情の処理)、第40条第1項(派遣先による苦情の処理)、第41条(派遣先責任者。第3号=苦情の処理)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088


