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労使協定方式——あなたの時給は、国が出す数字で下限が決まっている

編集部公開 2026年8月25日

派遣で働く人の待遇の決め方は、2つのうちどちらかになる。

自分がどちらなのかは、就業条件明示書や労働条件の書面に書いてある。

労使協定方式なら、時給の下限が国の数字で決まっていることになる。ここを知らずに働いている人が多い。

方式何を基準にするか根拠
派遣先均等・均衡方式派遣先の社員の待遇派遣法30条の3
労使協定方式国が毎年出す一般の労働者の賃金水準派遣法30条の4

なぜ2つあるのか

理由は時給が職場ごとに動くのを防ぐためになる。通達がこう説明している。

派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定になることが想定され、また、一般に賃金水準は大企業であるほど高く、小規模の企業であるほど低い傾向にあるが、派遣労働者が担う職務の難易度は、同種の業務であっても大企業であるほど高度で、小規模の企業ほど容易とは必ずしも言えず(略)

(令和8年度の一般賃金等について・職業安定局長通達)

派遣先で決めると、職場が変わるたびに時給が動いてしまう。それを避けるための仕組みになる。

下限はどう決まるか

労使協定に定める賃金は、一般の労働者の平均的な賃金と同等以上でなければならない(法30条の4第1項第2号イ)。

その「一般賃金」は、通達が計算方法を示している。

方法:職種別の基準値(①)× 能力・経験調整指数(②)× 地域指数(③)
中身
① 職種別の基準値賃金構造基本統計調査、または職業安定業務統計の求人賃金をもとに、賞与込みの時給に換算した額
② 能力・経験調整指数勤続年数に応じた指数(下記)
③ 地域指数派遣就業場所の地域の物価等を反映する指数。都道府県別・ハローワーク管轄地域別

①が賞与込みという点が効いてくる。介護派遣の時給が高く見える理由の1つになる。

勤続年数で下限が上がる

②の指数は、通達に実数が示されている。

能力・経験調整指数 勤続0年を100としたときの倍率 100 113.8 121.8 124.8 133.6 142.7 177.4 0年 1年 2年 3年 5年 10年 20年 勤続が延びると、下回れない水準も上がる 令和8年度の職業安定局長通達より
能力・経験調整指数は勤続0年を100として、20年で177.4になる。

勤続20年なら、0年の1.774倍が下限になる。

ここでいう勤続は、能力と経験の代理指標として使われているもの。通達は「勤続年数別の所定内給与(産業計)に賞与を加味した額により算出した指数」と説明している。

職種別の基準値(令和8年度)

通達の別表に、職種ごとの数値が載っている。医療・介護に関わるものを抜き出す(単位=円、時給)。

職種0年3年10年20年
1361 介護職員(医療・福祉施設等)1,1641,4531,6612,065
1362 訪問介護従事者1,3311,6611,8992,361
1371 看護助手1,0311,2871,4711,829
1134 准看護師1,2221,5251,7442,168
1133 看護師1,4871,8562,1222,638
1163 保育士1,2291,5341,7542,180
1144 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士1,3511,6861,9282,397
1168 介護支援専門員(ケアマネージャー)1,4101,7602,0122,501
1151 栄養士1,1541,4401,6472,047

これは「地域指数をかける前」の数字になる。実際の下限は、ここに派遣先の地域の指数をかけた額になる。

数値は賞与込み、かつ通勤手当を除いた額になる。表の各列は、勤続0年の額に能力・経験調整指数(113.8/124.8/142.7/177.4)をかけたものになる。

看護助手(1,031円)と看護師(1,487円)で456円の差がある。同じ職場で働いても、職種の区分で下限が変わることになる。

「同等以上」の意味

通達がはっきり書いている。

「同等以上」とは、労使協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額が、一般賃金の額と同額以上であることをいう。

下回ってはいけない、ということになる。上回るのは自由。

比較は時給換算で行う(通達)。

何が「賃金」に入るか

基本給のみならず諸手当も含まれるが、時間外、休日及び深夜の労働に係る手当等は含まれないこと。

残業代や夜勤の割増分を足して「水準を満たしている」とは言えないことになる。

通勤手当と退職金は、別に足す

上の表は「基本給・賞与・手当等」になる。通勤手当と退職金は、これとは別に確保することになっている。

通達が示す方法
通勤手当①実費支給で確保する。ただし上限があって実費に満たない人がいる場合、その上限額を時給換算して79円以上にする ②一律に79円を一般通勤手当とする
退職金①退職手当制度どうしで比較する ②一般基本給・賞与等に5%を乗じた額を一般退職金とする ③中小企業退職金共済制度等に加入し、同じく5%を乗じる

「時給に退職金相当分が含まれている」形は、②の方法になる。この場合、上の表の額に5%を上乗せした水準が必要になる。

どの方法を採るかは労使協定に書いてある。自分の時給が何を含んでいるかは、そこで決まる。

上がる仕組みも要る

条文は2つを求めている(法30条の4第1項第2号)。

中身
イ一般賃金と同等以上であること
ロ職務の内容、成果、意欲、能力、経験などの向上があった場合に賃金が改善されるものであること

「下限を満たしていればよい」ではない。上がる仕組みを協定に書くことが求められている。

通勤手当・家族手当・住宅手当などは、イ(同等以上)だけでよい。改善の仕組み(ロ)までは求められない(施行規則25条の8)。

そして、決め方についても定めがある。

派遣元事業主は、(略)派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、その賃金を決定すること。

(法30条の4第1項第3号)

最低賃金を下回ることはない

通達に、こう書かれている。

(基準値が)地域別最低賃金(略)又は特定最低賃金(略)を下回る場合には、地域別最低賃金又は特定最低賃金の額を「基準値(0年)」の額とした上で、当該額に能力・経験調整指数を乗じることにより、一般基本給・賞与等の額を算出すること。

基準値のほうが最低賃金より低ければ、最低賃金が基準値になる。そのうえで勤続の指数をかけることになる。

つまり労使協定方式の下限は、最低賃金以上であることが前提になる。

協定が無効になることがある

条文のただし書に、見落とされやすい規定がある。

ただし、第二号、第四号若しくは第五号に掲げる事項であつて当該協定で定めたものを遵守していない場合又は第三号に関する当該協定の定めによる公正な評価に取り組んでいない場合は、この限りでない。

(法30条の4第1項ただし書)

協定を守っていなければ、労使協定方式が使えなくなる。その場合は原則に戻り、派遣先の社員との均等・均衡(法30条の3)が適用されることになる。

守るべきものは、賃金の決定方法(2号)、賃金以外の待遇の決定方法(4号)、教育訓練の実施(5号)、そして公正な評価(3号)になる。

教育訓練と福利厚生は、協定の対象外

条文が明文で外している(法30条の4第1項の括弧書き)。

どう扱われるか根拠
派遣先の教育訓練労使協定の対象外。派遣先が実施する義務がある法40条2項/施行規則25条の7
派遣先の福利厚生施設同じく対象外。利用の機会を与える義務がある法40条3項/同上

食堂・休憩室・更衣室は、労使協定方式でも派遣先の社員と同じように使えることになる。

協定は見られる

派遣会社には周知の義務がある(法30条の4第2項)。方法は施行規則が定めている。

方法
1書面の交付
2本人が希望した場合のファクシミリ/電子メール等
3電子計算機のファイル等に記録し、常時確認できる状態にする
4事業所の見やすい場所に掲示・備付け(ただし概要を1か2の方法でも周知する場合に限る)

(施行規則第25条の11)

確認できるようにしておくことが義務になっている。書面で渡されるとは限らず、掲示や社内システムでの提供もある。どこで見られるかを聞くことになる。

協定の書面は、有効期間が終わった日から3年間保存することになっている(同25条の12)。

過半数代表者の要件

協定を結ぶ相手は、労働組合か、労働者の過半数を代表する者になる。後者には要件がある。

1労働基準法41条2号の監督・管理の地位にある者でないこと
2協定をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の民主的な方法で選出された者であって、派遣元事業主の意向に基づき選出されたものでないこと

(施行規則第25条の6第1項)

会社が指名した人では要件を満たさないことになる。

過半数代表者になったこと、なろうとしたこと、正当な行為をしたことを理由に、不利益な取扱いをしてはならないとも定められている(同条2項)。

自分の場合を確かめる

1. どちらの方式かを書面で確かめる(労使協定方式なら「協定対象派遣労働者」と書かれている)

2. 労使協定を見せてもらう(周知の義務がある)

3. 自分が協定の対象に入っているか、協定の有効期間がいつまでかを見る

4. 協定の賃金テーブルと、自分の時給を比べる。このとき——

5. 勤続年数が上がったときに、上がる仕組みがあるかを見る

  • 比べるのは基本給・賞与・手当等(時間外・休日・深夜の割増は入れない)
  • 通勤手当と退職金は別枠。協定でどの方法を採っているかを見る

下回っているようなら、まず派遣会社に聞く。動かないときは、都道府県労働局の需給調整事業を担当する窓口に相談する。

出典

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条の3(派遣先均等・均衡方式)、第30条の4(労使協定方式。第1項各号と、ただし書=協定を遵守していない場合)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第25条の6(過半数代表者の要件)、第25条の7(協定の対象外=派遣先の教育訓練・福利厚生施設)、第25条の8(イのみでよい賃金)、第25条の9(一般賃金の額)、第25条の10(協定に定めるその他の事項)、第25条の11(周知の方法)、第25条の12(3年間の保存)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020
  • 厚生労働省職業安定局長「令和8年度の『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」』等について」(職発0825第1号・令和7年8月25日。計算方法、能力・経験調整指数、同等以上の意味、賃金の範囲。適用期間=令和8年4月1日から令和9年3月31日まで)(2026年8月25日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001547248.pdf

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