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派遣先でハラスメントを受けたら——派遣先にも義務がある

編集部公開 2026年8月24日

派遣は、雇っている会社と、指示を出す職場が別になる。だから「派遣先は雇い主じゃないから、言っても仕方ない」と思われやすい。

そうではない。派遣先にも、法律上の義務がかかっている。

派遣先も「事業主とみなす」と書かれている

ハラスメント防止の措置義務は、それぞれの法律で「事業主」に課されている。派遣で働く人にとって、その事業主は派遣会社になる。

ここに、派遣法が特例を置いている。

労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、(略)規定を適用する

(労働者派遣法第47条の2ほか)

派遣先も、雇っている事業主とみなされる、ということになる。

ただし全部ではない。みなされるのは、47条の2から47条の4が挙げている規定について、その派遣就業に関してになる。派遣先が丸ごと雇い主になるわけではない。

しかも各特例条文の後段で、読み替えが指定されている。

「雇用管理上」とあるのは、「雇用管理上及び指揮命令上」とする

雇い主としての雇用管理は派遣元、現場の指揮命令は派遣先が持つ。だから「雇用管理上必要な措置」のままでは、派遣先への義務が空振りする。そこで指揮命令上を足している。逃げ道をふさぐための読み替えになる。

派遣元 雇っている会社 措置義務あり (雇用管理上) 派遣先 指示を出す職場 措置義務あり (+指揮命令上) どちらにも義務がかかる 派遣先にも義務がかかる根拠 派遣法 47条の2 → セクハラ・妊娠出産等 派遣法 47条の3 → 育児・介護に関するもの 派遣法 47条の4 → パワハラ 派遣先も「事業主とみなす」と条文に書かれている
派遣元と派遣先の両方に、ハラスメント防止の措置義務がかかる。根拠は派遣法47条の2から47条の4。

どのハラスメントに、どの条文が対応するか

何のハラスメントか措置義務の条文派遣先にも適用する条文
パワハラ労働施策総合推進法 第30条の2第1項派遣法 第47条の4
セクハラ男女雇用機会均等法 第11条第1項派遣法 第47条の2
妊娠・出産等に関するもの同法 第11条の3第1項同上
育児休業・介護休業等に関するもの育児・介護休業法 第25条派遣法 第47条の3

どの種類でも構造は同じになる。措置義務の条文があり、それを派遣先にも適用する条文が派遣法にある。

パワハラは、条文に3つの条件が書いてある

労働施策総合推進法第30条の2第1項が言っているのは、次の3つがそろった言動になる。

#条文の言葉意味
1優越的な関係を背景とした言動逆らいにくい相手からのもの
2業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの指導として説明がつかない
3就業環境が害される働き続けるのに支障が出ている

「厳しい指導」と分けているのが2番になる。必要な範囲の指導は当たらない。逆に、範囲を超えていれば指導という名前でも当たる。

2026年10月1日から、対象が増える

厚生労働省が、2026年(令和8年)10月1日から次の2つが義務化されると案内している。

  • カスタマーハラスメント対策の義務化
  • 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化

上の表は、それ以前からある4種類になる。カスタマーハラスメント=顧客等からの言動に起因する問題は、10月1日から加わる。

この記事に書いた条番号は、2026年8月24日時点のものになる。法律の改正で番号が動くことがあるので、条文を人に示すときは日付とあわせて確かめる。

言う先は3つある

派遣は窓口が複数ある。どれか1つに限られていない。

言う先何を根拠に動くか
派遣先の窓口上の措置義務。相談に応じる体制を作る義務がある
派遣元(派遣会社)の窓口同じ措置義務。雇い主としての義務になる
派遣元・派遣先の苦情の申出先派遣法第40条第1項。派遣先は派遣元に通知し、連携して処理する義務がある

苦情の申出先の名前と連絡先は、就業条件明示書に書かれている。

派遣先に直接言いにくいときは、派遣元の窓口を使える。 必要な範囲で派遣先と連携して処理されることになる。どこまで、誰に伝わるかは窓口で先に確認する。

相談したことで不利益を受けたら

ここは、派遣元と派遣先で条文の作りが違う。

派遣元(雇い主)に対しては、はっきり書かれている。

事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(労働施策総合推進法第30条の2第2項。均等法第11条第2項も同じ)

派遣先については、条文の作りが違う。 派遣法第47条の4が派遣先に適用すると書いているのは第30条の2第1項(措置義務)で、第2項はみなし適用の対象に入っていない。

ただし、派遣先も不利益な取扱いをしてはならないとされている。根拠は条文ではなく、厚生労働省がこの特例の運用を示した通達になる。

派遣元の事業主のみならず、派遣先の事業主もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるパワーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならないこと。

(雇児発0802第2号。セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントについても同じ趣旨が書かれている)

「派遣を止める」という形の報復も、ここで名指しされている。派遣先が使いやすい手段だからになる。

このほか、条文で直接定められているものが2つある。

何を理由とするものか誰が禁じられているか根拠
厚生労働大臣への申告(派遣法違反の事実)派遣元と派遣先の両方派遣法第49条の3第2項
妊娠・出産等派遣元。派遣先にもみなし適用均等法第9条第3項/派遣法第47条の2

派遣元・派遣先の窓口に相談した段階と、外の窓口に申告した段階では、効く根拠が変わる。

やっておくこと

窓口に言う前でも、あとでも、次を残しておく。

1. いつ・どこで・誰が・何を言ったかを、日付つきでメモする

2. メール、チャット、勤務表など、日付が残るものを保存する

3. 見ていた人がいるなら、その人がいたという事実もメモに書く

4. 体調に出ているなら、受診の記録を残す

評価や感想ではなく、起きたことを書く。「ひどいことを言われた」ではなく「◯月◯日、休憩室で◯◯と言われた」になる。

外の窓口

派遣元・派遣先の窓口が動かないときは、外に出す。

どこ何を扱うか
総合労働相談コーナー(全国378か所)あらゆる労働問題の入口。無料・予約不要
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)ハラスメント、均等法・育介法に関わること
都道府県労働局の需給調整事業部(課)派遣の仕組みに関わること(苦情処理が動かない、など)

どこに行くか迷うなら、総合労働相談コーナーでよい。法律違反の疑いがあれば、権限を持つ部署に取り次がれる。

契約を切られそうなときは

ハラスメントを訴えたあとに、契約の更新を断られる、就業先を替えられる、という話が出ることがある。

契約の途中で終わる話と、更新しない話は別物になる。それぞれ別の記事で扱っている。ここで大事なのは、訴えた時期と、扱いが変わった時期を記録しておくことになる。前後関係が示せる形にしておく。

危険が続いているなら、満了を待たない。安全に関わることは、先に外の窓口に相談する。

出典

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第40条第1項(苦情の処理)、第47条の2(均等法の適用の特例)、第47条の3(育児・介護休業法の適用の特例)、第47条の4(労働施策総合推進法の適用の特例)、第49条の3第2項(申告を理由とする不利益取扱いの禁止)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2(職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
  • 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第9条第3項(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止)、第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)、第11条の3(妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113
  • 厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2から第47条の4までの規定の運用について」(雇児発0802第2号・平成28年8月2日。派遣先も相談を理由とする不利益取扱いを行ってはならない旨。2026年8月24日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2128&dataType=1&pageNo=1
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026年10月1日施行=カスタマーハラスメント対策および求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化。2026年8月24日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
  • 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(設置か所数、無料・予約不要、取次ぎの扱い。2026年8月24日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

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