働き始める前に、条件を書いた紙(または電子の書面)を受け取る。就業条件明示書という。
読み飛ばされやすいが、書くことが法律で決まっている書面になる。しかも、あとで困ったときに使う情報が、ほぼここに載っている。
この書面はあなたに向けて渡されるもの。中身の多くは、派遣会社と派遣先が結ぶ契約から来ている。
賃金や雇用契約の期間は、別の書面(労働条件通知書・雇用契約書)で示されることがある。一体になっていることもある。
どこを見ればいいかを、条文の順に確かめる。
そもそも渡す義務がある
派遣会社は、派遣をしようとするとき、あらかじめ、その派遣労働者に対して定められた事項を明示しなければならない(労働者派遣法第34条第1項)。
「あらかじめ」なので、働き始めたあとに渡されるのは順序が違うことになる。
何が書かれているか
明示する中身は、派遣会社と派遣先が結ぶ契約に定める事項(同法第26条第1項各号)と重なる。条文が挙げているのは次のものになる。
| 号 | 中身 | ここを見る理由 |
|---|---|---|
| 一 | 従事する業務の内容 | 契約に無い仕事を頼まれたとき、これが根拠になる |
| 二 | 就業の場所と組織単位 | 3年の期間制限は「組織単位」で数える |
| 三 | 直接指揮命令する者 | 誰の指示で動くのかが決まっている |
| 四 | 労働者派遣の期間と就業する日 | 満了の日。更新の話をするときの基準 |
| 五 | 開始と終了の時刻、休憩時間 | シフトの話が違ったとき、これと照らす |
| 六 | 安全衛生に関する事項 | |
| 七 | 苦情の申出を受けた場合の処理に関する事項 | 困ったときの窓口。ここに担当者名がある |
| 八 | 契約が解除されたときの雇用の安定を図る措置 | 途中で終わったときに何をしてもらえるか |
| 九 | 紹介予定派遣のときは、その内容と労働条件 |

抵触日は、原則として2つ書いてある
抵触日とは、期間制限に引っかかる最初の日をいう。同じ第34条第1項は、上の項目に加えて2つの日付を明示することを求めている(第3号・第4号)。
| 何の日か | |
|---|---|
| 第34条第1項第3号の日 | あなたが、その組織単位で働き続けられなくなる最初の日(個人単位) |
| 第34条第1項第4号の日 | 派遣先の事業所が、派遣を受け入れられなくなる最初の日(事業所単位) |
2つあるのは、数え方が2つあるからになる。起点が違うので、日付もずれる。詳しくは3年ルールの記事で扱っている。
書かれていない場合がある。 期間制限そのものの対象外になる働き方があるため(法第40条の2第1項各号)。無期雇用派遣、60歳以上など、有期プロジェクトの業務、日数が限られた業務、産前産後・育児・介護休業の代替がこれに当たる。この場合、第34条第1項の括弧書きにより第3号・第4号は明示から除かれる。
そして、派遣先から新しい抵触日の通知を受けたときは、派遣会社は遅滞なくそれを明示しなければならない(同条第2項)。日付が延びたら、知らされることになる。
もう1つ、併せて明示されること
派遣先が違法な受入れをした場合、派遣先が労働契約の申込みをしたものとみなされるという規定がある。派遣会社は、そのことも併せて明示しなければならない(法第34条第3項)。
制度としては強いが、当てはまる場面は限られる。明示書にこの記載がある、ということだけ知っておけばよい。
料金の額も明示される
派遣会社は、労働者派遣に関する料金の額を明示しなければならない(同法第34条の2)。
- 派遣労働者として雇い入れようとするとき
- 派遣をしようとするとき、および料金の額を変更するとき
ここでいう料金は、派遣先が派遣会社に払う額になる。自分の時給ではない。個別の派遣料金が示されることも、事業所の平均額が示されることもある。マージン率の話とつながる部分になる。
見つからないときは
紙で受け取っていないなら、次を確かめる。
1. 電子で受け取っていないか(メール、マイページ、アプリ)
2. 別紙になっていないか(条件が複数に分かれていることがある)
3. それでも無ければ、派遣会社に請求する
明示は義務になっている。「もらっていない」なら、そのこと自体が問題になる。請求しても出てこないときは、都道府県労働局の派遣を扱う窓口(需給調整事業部・課)に相談できる。
保管しておく
この書面は、あとで使う。
- 契約に無い業務を頼まれたとき → 一号(業務の内容)と照らす
- シフトや時間が違うとき → 五号(開始・終了の時刻)と照らす
- 困ったとき → 七号(苦情の申出先)に連絡する
- 更新の話が来たとき → 四号(期間)で満了日を確かめる
明示された労働条件が事実と違うときは、即時に契約を解除できる(労働基準法第15条第2項)。この条文が対象にしているのは労働条件に当たる部分になる。そのときの根拠が、手元の書面になる。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第26条第1項(労働者派遣契約に定める事項)、第34条(就業条件等の明示)、第34条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 労働基準法 第15条第2項(明示された労働条件が事実と相違する場合の即時解除)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049


