派遣会社に言っても動かない。そういうときに使える窓口が、公的な機関に用意されている。
ただし窓口によって扱うものが違う。合わないところに持っていくと、取り次がれて時間がかかる。
先に結論を書くと、何の法律の話かで行き先が決まる。
どこに行くか
| 相談したいこと | 行き先 |
|---|---|
| 何を言えばいいか分からない。まず誰かに聞きたい | 総合労働相談コーナー |
| 賃金・残業代・休業手当が払われない。労働時間や休憩がおかしい | 労働基準監督署 |
| 派遣の仕組みに関わること(苦情処理が動かない、期間制限、待遇差) | 労働局の需給調整事業部(課) |
迷ったら総合労働相談コーナーでよい。ここが入口として作られている。
総合労働相談コーナー
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内など378か所に設置されている。
| 扱うもの | 解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどあらゆる分野の労働問題 |
|---|---|
| 誰が使えるか | 労働者、事業主のどちらからでも。学生・就活生も可 |
| 費用 | 無料 |
| 予約 | 不要 |
「あらゆる分野」と書かれているとおり、内容を選ばない。何の問題か整理できていない段階で行ってよい。
そして、法律違反の疑いがある場合は、権限を持つ部署に取り次がれる。自分で振り分ける必要がない。これがこの窓口の役割になる。

労働基準監督署
労働基準法に関わることを扱う。行政指導の権限があるのがここになる。
派遣で使う場面は、たとえば次のようなとき。
- 賃金が支払われない、遅れている
- 休業手当が払われない(派遣先の都合で仕事が無くなったのに)
- 残業代が出ない、労働時間の記録がおかしい
- 労働条件を書いた書面をもらえない
払う義務があるのは、雇っている派遣会社になる。派遣先ではない。持っていく先を間違えない。
労働局の需給調整事業部(課)
労働局の中にある、派遣事業と職業紹介事業を扱う担当部署になる。派遣会社に許可を出し、指導・監督をしている側になる。
東京労働局の窓口案内には、扱うものとしてこう書かれている。
派遣労働者の方の労働者派遣就業に関するトラブル
派遣労働者の均等・均衡待遇に係る相談
つまり、派遣という働き方の仕組みに関わることは、ここになる。
派遣で使う場面は、たとえば次のようなとき。
- 苦情を申し出ても処理されない(派遣先が派遣元に通知し、連携して処理する規定=法第40条第1項)
- 期間制限の対象なのに、3年ルールが守られていない
- 要件に当てはまるのに、雇用安定措置が取られない
- 派遣先の社員との待遇差について
受付は平日の日中(東京労働局の場合は8時30分から17時15分)。局によって時間が違うので、行く前に確認する。
持っていくもの
窓口でまず聞かれるのは、いつ・誰が・何をしたかになる。次のものがあると話が早い。
- 就業条件明示書(働く条件を書いた書面)
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 給与明細(賃金の話のとき)
- 担当者とのやりとりの記録(メール、アプリの履歴、日付のメモ)
書面が無い、という事実そのものが相談の材料になる。もらっていないなら、その旨を伝える。
言い方
事実を時系列で伝える。感想より先に、起きたことを置く。
| 伝わりにくい | 伝わりやすい |
|---|---|
| ひどい扱いを受けている | ◯月◯日から、契約に無い業務を指示されている |
| 給料がおかしい | ◯月分の給与で、残業◯時間分が計算に入っていない |
| 会社が動かない | ◯月◯日に担当に伝え、◯日経っても返答がない |
どうしてほしいかも伝える。払ってほしいのか、やめさせてほしいのか、説明がほしいのか。着地点があると窓口も動きやすい。
相談・申告したことで不利益を受けたら
労働基準法に違反する事実があるとき、労働者はその事実を労働基準監督署などに申告することができる(同法第104条第1項)。そして、
使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
と定められている(同条第2項)。申告したことを理由に切られてはならない、ということになる。
相談や申告のあとに契約を切られたり、仕事を回されなくなったりした場合は、そのこと自体を窓口に伝える。やりとりの記録を残しておく。日付が入っていれば、前後関係が示せる。
派遣法にも同じ規定がある。 派遣会社や派遣先が派遣法に違反している事実があるとき、派遣労働者はその事実を厚生労働大臣に申告することができる(労働者派遣法第49条の3第1項)。そして、
労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、前項の申告をしたことを理由として、派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
こちらは派遣会社と派遣先の両方が対象になっている(同条第2項)。派遣先も名指しされている点が労基法と違う。
ただし条文が守っているのは「申告」になる。窓口で話を聞いてもらう「相談」と、違反の事実を申し立てる「申告」は別の行為になる。不利益な扱いが心配なら、窓口でその点も相談する。
出典
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(設置か所数、扱う内容、無料・予約不要、取次ぎの扱い。2026年8月24日取得)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html - 東京労働局 需給調整事業部「相談窓口のご案内」(扱う相談の内容、受付時間。2026年8月24日取得)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/riyousha_mokuteki_menu/mokuteki_naiyou/haken_part/madoguchi003/002.html - 労働基準法 第104条(監督機関に対する申告。第2項=申告を理由とする不利益取扱いの禁止)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第40条第1項(苦情の処理)、第49条の3(厚生労働大臣への申告。第2項=申告を理由とする不利益取扱いの禁止)(e-Gov法令検索・2026年8月24日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088


