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介護派遣の時給は本当に高いのか——増えるものと、減るもの

編集部公開 2026年8月22日

派遣の時給が直接雇用より高く見えるのには、制度上の理由がある。賞与にあたる分は、時給に含まれている。退職金は会社によって扱いが違い、時給に含まれている場合と、退職金として別に受け取る場合がある。どちらも法律と毎年の通達で決まっている。

だから時給の額だけを並べても比較にならない。同じ働き方でも、年収にすると逆転することがある。

分かれ目は2つ。勤務時間が安定して確保できるかと、賞与が出る職場かどうか。

派遣の時給には、法律上の下限がある

派遣で働く人の賃金の決め方は2通りある。派遣先の社員と比べて決める方法(派遣先均等・均衡方式)と、派遣会社が労使で協定を結んで決める方法(労使協定方式)で、実際には後者が多く使われている。

労使協定方式を使う場合、労働者派遣法第30条の4第1項第2号イは、同じ業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額と同等以上でなければならないと定めている。

この「一般の労働者の平均的な賃金の額」は、厚生労働省が毎年度、職業安定局長通達として公表している。職種ごと・地域ごとに水準が示され、派遣会社はそれを下回る賃金を設定できない。

つまり派遣の時給は、会社が自由に決めているのではなく、下限が外から決まっている。

その水準は、賞与を含んだ額として作られている

ここが誤解されやすい。通達が示す一般賃金の額は、賞与を含んだ水準として設定されている。

直接雇用なら年2回に分けて受け取るものが、派遣では毎月の時給に溶けている。「賞与がない代わりに時給が高い」という説明は、印象の話ではなく、制度がそう作られているということになる。

したがって、直接雇用の求人と時給だけを見比べると、派遣が高く出るのは当然になる。比べるなら、賞与を含めた年間の総額で見ることになる。

退職金は、3つのうちどれかになる

退職金の扱いは通達で決まっていて、派遣会社は次の3つのいずれかを労使の話し合いで選ぶ。どれを選んでいるかで、受け取り方がまったく違う。

会社が選んだものあなたの受け取り方
選択肢1退職手当制度を持ち、国が示す統計と比べる退職金として、辞めるときに受け取る
選択肢2退職費用分(6%)を時給に上乗せする毎月の時給に含まれている(前払い)
選択肢3中小企業退職金共済などに加入する(給与の6%以上)共済から受け取る

選択肢2は、一般の労働者の賃金水準に退職費用分の6%を上乗せし、そのうえで派遣労働者の賃金と比べるという方法。この場合、時給が高い理由の一部は退職金の前払いになる。

選択肢1を選んだ会社なら、時給にその分は乗っていない代わりに、辞めるときに退職金が出る。選択肢3なら共済から出る。選択肢2と3を組み合わせることもできる(その場合は合計が一般退職金と同等以上であることが必要)。

つまり「派遣は退職金がない代わりに時給が高い」は、選択肢2を選んだ会社にだけ当てはまる。自分がどれなのかは、登録した会社の労使協定を見るか、登録のときに聞けば分かる。

登録のときの聞き方は「退職金は、時給への上乗せですか。それとも退職金制度か共済ですか」。

交通費は「込み」か「別」かで意味が変わる

通勤手当についても通達に定めがある。通勤にかかる実費が支給される場合は一般通勤手当と同等以上とみなされ、実費支給でない場合は、一般の労働者の通勤手当に相当する額と同等以上であることが求められる。

実務では2通りある。時給とは別に交通費が出る形と、時給に交通費が含まれている形。後者の場合、表示されている時給から通勤にかかる額を引いて考えることになる。

月に20日通って往復700円かかるなら、月14,000円。時給に直すと、1日8時間・月160時間として約88円になる。時給が100円高くても、交通費込みなら差はほとんど残らない。

増えるものと、減るもの

派遣直接雇用(正職員)
時給の額高く出やすい低く出やすい
賞与時給に含まれている別に支給(額と回数は職場による)
退職金時給に6%上乗せ/退職金制度/共済のどれか制度があれば勤続に応じて
昇給契約の更新時に見直し定期昇給がある職場が多い
社会保険条件を満たせば加入加入
有給休暇条件を満たせば付与付与
勤務時間契約で決めた範囲職場の都合で変動しやすい
契約の期間期間の定めがある期間の定めがない

社会保険と有給休暇は、派遣でも条件を満たせば付く。「派遣だから付かない」ということはない。

年収で比べると、どこで逆転するか

逆転するかどうかは、勤務時間と賞与で決まる。

時間が安定して確保できる場合、派遣のほうが年収で上回ることがある。賞与の分が毎月入り、退職金も前払い(選択肢2)なら毎月入るため。

時間が減る月がある場合、そこがそのまま収入減になる。契約で週◯日と決めていても、施設の都合で減ることはある。減ったときにどうなるかは、契約書に書かれている。

賞与が出る職場と比べる場合、賞与の額次第で逆転する。介護の直接雇用は、処遇改善加算の配分方法によって賞与や一時金の額が職場ごとに大きく違う。

比べるときに見る数字は、時給ではなく次の3つになる。

  • 月に何時間働けるか(契約上の下限があるか)
  • 交通費が別に出るか、時給に含まれているか
  • 退職金は3つのどれか(時給への上乗せ/退職金制度/共済)

この3つは、登録の面談で聞けば答えが返ってくる。時給の額だけを聞いて比べると、判断を誤ることになる。

お金の面から見た、向き不向き

制度の作りから言えることだけを並べる。

派遣のほうが有利になりやすい場合

  • 働ける時間がはっきりしていて、その時間を確保できる。賞与の分が毎月入るので、同じ時間なら手取りが先に増える
  • 数年以内に働き方を変える予定がある。退職金は勤続が長いほど効くため、短い期間なら前払い(選択肢2)の会社のほうが得になりやすい
  • 複数の職場を見てから決めたい。契約期間が区切られていることが、この場合は利点になる

直接雇用のほうが有利になりやすい場合

  • 同じ職場で長く働きたい。退職金の制度がある職場なら、勤続とともに差が開く
  • 収入の変動を避けたい。派遣は勤務時間が減るとそのまま収入が減る
  • 賞与がしっかり出る職場に入れる見込みがある。介護は処遇改善加算の配り方が職場ごとに違い、賞与や一時金の額に差が出る

「派遣か、直接雇用か」を先に決めると選択肢が狭くなる。同じ施設で両方の募集が出ていることもあるので、条件を並べてから決めるほうが早い。

出典

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