介護の派遣は、資格がなくても始められる。特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなどの施設で働く場合、法律上は資格が要件になっていない。
働けないのは、利用者の自宅を訪問する仕事だけ。介護保険の訪問介護と、障害福祉の居宅介護は、研修を修了していることが条件になっている。
会社選びで見るところは「資格取得支援あり」かどうかではない。それはほぼどの派遣会社も書ける。分かれるのは、費用を誰が払うか、いつ受けられるか、受講している間に賃金が出るかの3点になる。
無資格で就ける仕事、就けない仕事
施設の介護職員には、資格の要件がない。
特別養護老人ホームの基準を見ると、介護職員について定めているのは人数だけで(入所者3人につき常勤換算で1人以上)、資格については何も書かれていない。有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスも同じ考え方で、無資格でも介護職員として働ける。

訪問介護は、研修の修了が条件になっている。
利用者の自宅を訪問する介護(訪問介護)に従事できるのは、介護福祉士か、介護保険法施行令第3条が定める人に限られる。この政令が挙げているのは、都道府県知事が行う介護員の養成研修、または都道府県知事の指定を受けた研修を修了し、修了証の交付を受けた人。実務では介護職員初任者研修がこれにあたる。
| 無資格で働けるか | |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム・有料老人ホーム | 働ける |
| グループホーム | 働ける |
| デイサービス(通所介護) | 働ける |
| 障害福祉の事業所(通所・入所) | 働ける |
| 訪問介護(自宅に行く仕事) | 働けない(研修の修了が要る) |
| 障害福祉の居宅介護(自宅に行く仕事) | 働けない(同上) |
同じ考え方は障害福祉にもあてはまる。通所や入所の事業所は無資格でも働けるが、自宅を訪問する居宅介護は、介護保険の訪問介護と同じく研修の修了が条件になっている(介護保険法施行令第3条)。
よく「無資格だと身体介護はできない」と説明されるが、これは訪問の話。施設の中では、資格の有無で従事できる業務が法律上分かれているわけではない。実際にどこまで任されるかは、施設の方針と本人の習熟による。
なお、訪問の仕事でも、掃除・洗濯・調理といった生活援助だけなら、初任者研修より短い研修(生活援助従事者研修)で就ける。政令が求めているのは「介護員養成研修の修了」で、この研修にはいくつか種類がある。身体介護まで担当するなら介護職員初任者研修(130時間)になる。
未経験であることは、資格ほど障害にならない
求人の条件で線が引かれるのは、経験の有無より資格の有無になる。訪問介護は研修の修了が法律上の条件だが、経験年数を条件にしている法令はない。
未経験で入ったときに実際に効いてくるのは、教える体制のほうになる。同行の期間があるか、初日から1人で入るのか、分からないことを誰に聞くのか。この3つは施設ごと・会社ごとに違い、求人票には書かれていないことが多い。登録の面談で聞くことになる。
「資格取得支援あり」で会社を選べない理由
派遣会社が「研修制度あり」「資格取得支援あり」と書けるのには理由がある。教育訓練は、派遣事業をやるための条件だから。
労働者派遣法第30条の2は、派遣元事業主に対し、雇っている派遣労働者が段階的かつ体系的に技能と知識を習得できるよう、教育訓練を実施しなければならないと定めている。
さらに厚生労働省の許可基準では、教育訓練の実施計画について次のことが求められている。
- 雇っているすべての派遣労働者を対象にすること
- 有給かつ無償で行うこと
- 派遣労働者として雇うときの教育訓練(入職時の教育訓練)を含むこと
- フルタイムで1年以上の雇用見込みの人1人あたり、毎年おおむね8時間以上の機会を提供すること
- 少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会を提供すること
つまり、この条件を満たさない会社は許可を受けられない。「研修があります」は、選ぶ材料にならない。
一方で、介護職員初任者研修そのものの費用は、この教育訓練とは別になっていることが多い。外部のスクールに通う費用をどう扱うかは会社ごとに違う。ここが実際の分かれ目になる。
見るのは3点
1. 費用を誰が払うか
全額を会社が負担する、一部を負担する、いったん本人が払って後から戻る、の3通りがある。戻る形の場合、「働き始めてから◯か月後」「◯か月以内に辞めたら返還」といった条件が付くことがある。金額だけでなく、条件まで確認することになる。
2. いつ受けられるか
就業前に受けられる会社と、働き始めてから受ける会社がある。働きながら受ける場合、シフトの中に組み込まれるのか、休みの日に行くのかで負担が変わる。
3. 受講している間に賃金が出るか
許可基準の教育訓練は有給と決まっている。しかし外部スクールでの資格取得は、その枠外として扱われることがある。受講日の扱いが有給なのか、無給の休みなのかは会社によって違う。
この3点を聞くと、答え方でも差が出る。金額と時期と条件を数字で答えられる会社は、他の条件も正確に答える。
無資格から始めるときの順番
施設で働きながら初任者研修を受け、修了してから訪問も選べるようにする、という順番が取りやすい。訪問介護は1件あたりの時間が短く、移動もあるため、慣れてからのほうが組みやすいという事情もある。
初任者研修は130時間ある。通学と自宅学習を組み合わせる形が多く、週1回の通学だと数か月かかる。シフトを入れながら通うことになるので、修了までの期間をどう見ているかは、費用と同じくらい先に確認しておく項目になる。
登録の時点で決める必要はない。ただし、初任者研修を受けるつもりがあるなら、登録の面談でその意思を伝えておくと、費用と時期の話がその場で出てくる。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条の2(e-Gov法令検索・2026年8月22日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 介護保険法施行令 第3条(e-Gov法令検索・2026年8月22日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412 - 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第5条(e-Gov法令検索・2026年8月22日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037 - 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第2条(e-Gov法令検索・2026年8月22日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039 - 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領(許可基準)」(2026年8月22日取得)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000133882.pdf - 厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について」(2026年8月22日取得)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/kaigoinnyouseikennsyuu.pdf


