「交通費支給」と書かれた求人と、書かれていない求人がある。時給が高いほうが得とは限らない。
先に結論を書くと、通勤手当そのものを義務づける法律は無い。ただし派遣には、労使協定方式なら下限があるという事情がある。
3通りある
| どうなるか | 明細の見え方 | |
|---|---|---|
| 1 別に出る | 実費が支給される | 通勤手当の行がある |
| 2 時給に込み | 時給の中に入っている | 通勤手当の行が無い |
| 3 上限つき | 一定額まで支給。超えた分は自己負担 | 通勤手当の行があるが、頭打ち |
2の場合、遠いほど手取りが減る。時給が同じでも、通勤に片道1時間かかる職場と15分の職場では、実際に残る額が違う。
1の「別に出る」にも、実費・定額・距離単価といった形がある。どの形かは書面で確かめることになる。
法律に一般的な支給義務が無いことと、書面に支給条件が書かれていることは別になる。求人票や就業条件明示書に「交通費支給」とあるなら、その条件で支払われることになる。
方式によって、根拠が変わる
派遣の待遇の決め方は2つある。どちらかによって、通勤手当の根拠も変わる。
| 方式 | 通勤手当の根拠 |
|---|---|
| 労使協定方式 | 国が示す水準(下記の79円) |
| 派遣先均等・均衡方式 | 派遣先の通常の労働者との比較 |
自分がどちらかは、就業条件明示書や労働条件の書面に書いてある。順に見ていく。
労使協定方式なら、79円の下限がある
厚生労働省の通達が、2つの方法を示している。
方法1——実費で支給する
協定対象派遣労働者に対し、通勤手当として、派遣就業の場所と居住地の通勤距離や通勤方法に応じた実費が支給される場合には、一般通勤手当と同等以上であるものとする。
実費が出ていれば、それで水準を満たす。
ただし、上限がある場合の縛りがある。
ただし、当該通勤手当の額に上限があるため、通勤手当の額が、(略)実費に満たない協定対象派遣労働者がおり、当該上限額を協定対象派遣労働者の平均的な所定内労働時間1時間当たりに換算した額が「79円」未満である場合には、当該額が「79円」以上となるようにすること。
上限が低すぎて時給換算79円を割るなら、79円以上にしなければならないことになる。
方法2——時給に含める
一般の労働者の1時間当たりの通勤手当に相当する額を一般通勤手当とし、当該額を「79円」とする。
「交通費込み」の時給でも、79円分は確保されているという建て付けになる。
1日8時間なら1日632円、月20日で12,640円に相当する。
79円は、基本給の水準とは別枠
ここが大事なところになる。通勤手当は、基本給・賞与等の水準とは別に確保することになっている。
| 基本給・賞与・手当等 | 国が職種・経験年数・地域ごとに示す水準(職種別の基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数) |
|---|---|
| 通勤手当 | 上の額とは別に、実費または79円 |
| 退職金 | 同じく別枠(5%など) |
つまり「時給1,300円(交通費込み)」の会社は、1,300円の中に79円分の通勤手当が入っているという説明になる。基本給部分は1,221円として水準を満たす必要がある。
求人の時給を比べるときは、込みか別かを揃えてから比べることになる。
派遣先均等・均衡方式の場合
こちらは比べる相手が変わる。派遣先の通常の労働者との間で、不合理な待遇差を設けてはならないことになる(派遣法30条の3)。
派遣先の社員に通勤手当が出ているなら、派遣で働く人にも同じ扱いが求められることになる。
税金の扱いは、また別
通勤手当には非課税の限度額がある(所得税法施行令20条の2)。この範囲なら所得税がかからない。
電車・バスの場合
最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額(1月当たりの金額が15万円を超えるときは、1月当たり15万円)
月15万円まで非課税になる。
車・バイクの場合
距離で決まっている。
| 片道の距離 | 1か月あたりの非課税限度 |
|---|---|
| 2km未満 | 全額が課税(非課税の対象外) |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 55km以上65km未満 | 38,700円 |
| 65km以上75km未満 | 45,700円 |
| 75km以上85km未満 | 52,700円 |
| 85km以上95km未満 | 59,600円 |
| 95km以上 | 66,400円 |
駐車場を使う場合は、上の額に駐車場代(1か月5,000円が上限)が加算される(同条3号)。
限度を超えた分は課税される。「交通費なのに税金が引かれている」のは、これが理由になる。
「込み」と「別」で、どれだけ違うか
計算してみる。時給1,300円(交通費込み) と 時給1,250円+交通費実費 を比べる。
ここで比べるのは額面になる。税金や社会保険料を引く前の数字で見ている。通勤手当は非課税の枠があるので(下記)、手取りで見ると「別」のほうがさらに有利になりやすい。
| 込み1,300円 | 別1,250円+実費 | |
|---|---|---|
| 1日8時間・月20日の賃金 | 208,000円 | 200,000円 |
| 交通費 | 0(含まれている) | 実費 |
| 交通費が月10,000円なら | 208,000円 | 210,000円 |
| 交通費が月5,000円なら | 208,000円 | 205,000円 |
分かれ目は、月の交通費が8,000円を超えるかどうかになる(この例では50円×160時間=8,000円)。
遠い職場なら「別」が有利、近いなら「込み」が有利、ということになる。
確かめること
1. 込みか、別か(求人票と就業条件明示書)
2. 上限があるか、あるならいくらか
3. どちらの方式か(労使協定方式なら79円の下限がある)
4. 実費の計算方法(定期券代か、日額か。出勤日数で変わる)
5. 車通勤の場合の扱い(ガソリン代の単価、駐車場代)
4は見落としやすい。 週3日勤務で定期券代が出るのか、1日あたりで出るのかで、額が大きく変わる。
出典
- 厚生労働省職業安定局長「令和8年度の『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」』等について」(職発0825第1号・令和7年8月25日)第2の2(通勤手当=実費支給または79円)(2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/content/001547248.pdf - 所得税法施行令 第20条の2(非課税とされる通勤手当。第1号=交通機関の場合は月15万円、第2号=交通用具の場合の距離別の額、第3号=駐車場等の料金)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条の3(派遣先均等・均衡方式)、第30条の4(労使協定方式)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088


