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給与明細の見方——時給×時間と手取りが違う理由

編集部公開 2026年8月25日

時給1,300円で160時間働いた。208,000円のはずが、振り込まれたのは17万円台だった。

引かれているものが何かが分かれば、明細は読める。そして間違いにも気づける。

明細をもらうのは、法律上の権利

居住者に対し国内において給与等(略)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等(略)の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。

(所得税法第231条第1項)

明細の交付は義務になる。「明細は出していません」は成り立たない。

電子で提供することもできる。ただし本人の承諾が要る。そして本人が請求すれば、紙で交付しなければならない(同条2項)。

3つのまとまりでできている

① 勤怠 働いた日数・時間。残業と深夜の時間数もここ 出勤簿と合っているかを最初に見る ② 支給 基本給(時給×時間) 残業・深夜の割増、通勤手当、その他の手当 合計が「総支給額」 ③ 控除 健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険 所得税・住民税 労災保険料は引かれない ② 支給の合計 − ③ 控除の合計 = 手取り
給与明細は勤怠・支給・控除の3つでできている。
中身
① 勤怠働いた日数と時間。残業・深夜の時間数
② 支給基本給、割増、手当。合計が総支給額
③ 控除社会保険料と税金。合計を②から引いた額が手取り

① 勤怠——ここを最初に見る

勤怠欄を、出勤簿と照らす。 明細のどこに載るかは会社によって違う。

見るところ
労働日数出勤した日数と合っているか
労働時間数契約の時間×日数と合っているか
時間外労働時間数残業した分が計上されているか
深夜労働時間数22時〜5時に働いた分が別に出ているか
休日労働時間数法定休日に働いた時間

この項目は、賃金台帳の記載事項として法律で決まっている(労働基準法施行規則54条1項4号〜6号)。明細と台帳は別のものだが、中身は同じ材料から作られる。

間違いが起きるのはここになる。時間が間違っていれば、その下の計算は全部ずれる。

② 支給——何が足されているか

項目中身
基本給時給 × 労働時間
時間外手当法定時間外は2割5分以上(労基法37条1項・政令)。1か月60時間を超えた分は5割以上(同項ただし書)
深夜手当22時〜5時は2割5分以上の割増(同条4項)
休日手当法定休日の労働は3割5分以上(労基法37条1項・平成6年政令第5号)
通勤手当出る場合。「時給込み」なら行が無い。どちらかは契約書・就業条件明示書で確認する
その他の手当夜勤手当、資格手当など。会社ごと

時間外と深夜は重なる。22時以降の残業なら、両方が付く。

「休日」には2つある。 法律が求める法定休日(週1回または4週4日)と、それ以外の所定休日になる。3割5分の割増が付くのは法定休日のほうになる。所定休日に働いた分は、週40時間を超えていれば時間外(2割5分以上)として扱われる。

賃金台帳には「基本給、手当その他賃金の種類毎にその額」を記入することになっている(労基則54条1項7号)。種類ごとに分けて出るのが本来になる。

③ 控除——引かれているもの

項目何か誰が負担するか
健康保険料医療保険会社と折半
介護保険料40歳以上65歳未満会社と折半
厚生年金保険料年金会社と折半
雇用保険料失業給付など会社と本人で負担(割合は業種で異なる)
所得税国の税金。源泉徴収本人
住民税市区町村の税金。特別徴収の場合本人

労災保険料は引かれない。 全額が事業主負担になる。明細に「労災保険料」の行があったら、それは誤りになる。

勝手に引けるものは限られている

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令に別段の定めがある場合又は(略)労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

(労働基準法第24条第1項)

社会保険料と税金は「法令に別段の定めがある場合」に当たる。それ以外のもの(社宅費、貸付金の返済、親睦会費など)を引くには、労使協定が必要になる。

賃金台帳にも「控除した場合には、その額」を記入することになっている(労基則54条1項8号)。何を引いたかは記録される。

なぜ手取りが減るのか

時給1,300円×160時間=208,000円の例で見る。金額は仮のものになる。

総支給額208,000円
健康保険料・厚生年金保険料など引かれる
所得税引かれる
手取り総支給額から控除の合計を引いた額

控除の割合は、加入している健康保険や住んでいる自治体で変わる。保険料率は毎年見直され、都道府県や健康保険組合でも違うので、この記事では率を書かない。

自分の率は、明細の額を標準報酬月額(社会保険料を計算するときの基準になる額)で割れば分かる。または派遣会社に聞く。

おかしいと思ったら

順番に確かめる。

1. 勤怠——出勤簿・タイムカードと合っているか

2. 時給——契約と合っているか。更新後に上がっているはずが据え置きになっていないか

3. 割増——残業と深夜が別の行で出ているか

4. 通勤手当——契約どおりの額か

5. 控除——身に覚えのない項目が無いか

5で分からない項目があれば、派遣会社に聞く。労使協定に基づかない控除は、全額払いの原則に反することになる。

派遣会社に聞いても解決しないときは、内容ごとに窓口が違う。

何の話かどこへ
賃金が払われない、割増が出ない労働基準監督署
社会保険料の額や資格年金事務所(加入している健康保険組合がある場合はそちら)
雇用保険の資格ハローワーク
所得税の計算税務署

どこか分からないときは、総合労働相談コーナー(全国378か所・無料)から入る。

記録は5年間保存されている

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

(労働基準法第109条)

過去のことでも、記録は残っている。あとから確かめられる。

明細を取っておく

使う場面
確定申告年末調整で足りない控除がある場合
失業給付の手続き離職前の賃金で額が決まる
社会保険の手続き扶養に入る・外れるとき
未払いを争うとき何より強い材料になる

電子で受け取っている場合も、保存しておく。派遣会社のマイページは、退会すると見られなくなることがある。

出典

  • 所得税法 第231条(給与等の支払明細書の交付。第1項=交付義務、第2項=電磁的方法による提供と本人の請求)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
  • 労働基準法 第24条第1項(賃金の全額払いと控除の例外)、第37条(時間外・休日・深夜の割増賃金)、第108条(賃金台帳)、第109条(記録の5年間保存)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • 労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号。時間外=2割5分、休日=3割5分)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005
  • 労働基準法施行規則 第54条第1項(賃金台帳の記載事項=労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、賃金の種類ごとの額、控除した額)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023

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