「無期雇用派遣」と「5年ルールで無期になる」は、よく一緒に説明される。別の制度になる。
前者は入口の話、後者はあとから発生する権利の話になる。順に見ていく。
| 何か | 根拠 | |
|---|---|---|
| 無期雇用派遣 | 最初から期間の定めなしで派遣会社に雇われる働き方 | 派遣法(30条の2ほか) |
| 無期転換(5年ルール) | 有期の契約が通算5年を超えたとき、本人の申込みで無期になる権利 | 労働契約法18条 |
無期雇用派遣とは
派遣会社と、期間の定めのない雇用契約を結ぶ形になる。条文は「期間を定めないで雇用される派遣労働者」と定義している(派遣法第30条の2第1項)。
登録型との違いは、ここになる。
| 登録型(有期) | 無期雇用派遣 | |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 仕事が決まったときに結ぶ | ずっと続く |
| 派遣先が決まっていない期間 | 雇われていない | 雇われたまま |
| 契約の満了 | ある | 無い |
| 3年の期間制限 | かかる | かからない(下記) |
いちばん大きいのは「仕事が決まっていない間も雇われている」ことになる。 待機中の賃金がどうなるかは会社によって違うので、そこは確認することになる。
3年で職場を変わらなくてよい
派遣には期間制限がある。同じ「組織単位」で3年を超えて働けない、というものになる。
組織単位=課やグループなど、業務の配分に直接の権限を持つ人がいるまとまりをいう。事業所より小さい単位になる。
期間制限の条文は、例外を別の条文に飛ばしている。その例外の1つが無期雇用派遣になる。
条文はこうなっている。
派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第四十条の二第一項各号のいずれかに該当するものを除く)を行つてはならない。
(派遣法第35条の3)
この括弧書きの「40条の2第1項各号」の第1号が「無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣」になる。
つまり、無期雇用派遣なら3年を超えて同じ職場で働ける。3年で異動する必要がない、というのが制度上の大きな違いになる。
ただし、雇用安定措置の対象からは外れる
3年経つ前に派遣会社がすべきことを定めた条文がある(派遣法第30条)。派遣先に直接雇用を頼む、別の就業機会を出す、といった措置になる。
この条文が対象にしているのは「その雇用する有期雇用派遣労働者」になる。無期雇用派遣は対象外になる。
理由は分かりやすい。雇用そのものが続くので、安定させる措置が要らないという組み立てになる。
外れるのは、この30条の雇用安定措置だけになる。教育訓練の義務(30条の2)や待遇の規定は、無期雇用派遣にもかかる。むしろ30条の2は、無期の人について「職業生活の全期間を通じて能力を発揮できるように配慮」せよと足している。
5年ルール(無期転換)
こちらは有期で働いている人の話になる。
条文が言っていること
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(略)の契約期間を通算した期間(略)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。
(労働契約法第18条第1項)
分解すると、こうなる。
| 誰との通算か | 同一の使用者。派遣なら派遣会社になる |
|---|---|
| どれだけ | 原則として通算5年を超える(下記の特例あり) |
| 何をするか | 本人が申し込む |
| 会社は | 断れない(承諾したものとみなす) |
| いつまでに申し込むか | いま結んでいる契約が満了する日まで |
| いつから無期になるか | その満了日の翌日から |
「使用者」は雇っている側になる。だから働きに行く先が変わっても、同じ派遣会社である限り通算は切れない。
自動では無期にならない。 申し込んで初めて変わる。ここが最大の注意点になる。
5年に例外がある
別の法律に特例がある(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)。
| 誰が | どうなる | 条文 |
|---|---|---|
| 高度専門職(厚生労働大臣が定める基準に該当し、年収が省令の額以上の人が、5年を超える一定期間で完了する業務に就く場合) | 「5年」がその業務の期間(最長10年)に読み替えられる | 同法8条1項 |
| 定年後、引き続き同じ事業主に雇われる人(定年は60歳以上) | 定年後に引き続き雇用されている期間は通算に算入しない | 同法8条2項 |
どちらも、事業主が計画を作って認定を受けていることが条件になる(第一種・第二種認定事業主)。認定を受けていない会社では、原則どおり5年になる。
介護・医療の派遣で関係しうるのは、主に定年後の継続雇用のほうになる。
無期になっても、正社員ではない
同じ条文の後半にこう書かれている。
当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同一の労働条件(当該労働条件について別段の定めがある部分を除く)とする。
変わるのは契約期間だけになる。時給も仕事も、原則そのままになる。
「無期転換したら正社員になれる」ではない。契約期間の満了では終わらなくなる、というのがこの制度の中身になる。解雇や合意による退職で終わることは、これまでどおりある。
空白があると、通算がリセットされる
契約と契約の間に空白がある場合、その空白が一定以上なら、前の期間は通算に入らない(同条第2項)。
省令が具体的な計算を定めている。直前までの契約期間の2分の1(6か月を超えるときは6か月、1か月未満の端数は1か月に切り上げ)以上の空白があると、リセットされる。
| 直前までの契約期間(通算) | リセットされる空白 |
|---|---|
| 2か月以下 | 1か月以上 |
| 2か月超〜4か月 | 2か月以上 |
| 4か月超〜6か月 | 3か月以上 |
| 6か月超〜8か月 | 4か月以上 |
| 8か月超〜10か月 | 5か月以上 |
| 10か月超 | 6か月以上 |
この仕組みは、意図的に使われることがある。半年空けてから再契約すれば、通算が振り出しに戻る。自分の契約の履歴を残しておくことになる。
どちらを選ぶか、ではない
無期雇用派遣は募集の形になる。求人にそう書かれているものに応募する形で、あとから切り替えるものではない。
一方、無期転換はすでに5年を超えて働いている人の権利になる。選ぶというより、申し込むかどうかになる。
| いまの状況 | 関係するもの |
|---|---|
| これから登録する | 無期雇用派遣の求人があるか見る |
| 有期で働いている | 通算年数を数える。5年を超えたら申し込める |
| 3年で職場を変わりたくない | 無期雇用派遣なら期間制限がかからない |
確かめること
無期雇用派遣の求人を見るときは、次を確認する。
1. 待機中の賃金——仕事が決まっていない間、いくら出るか
2. 就業先の決まり方——断れるのか、会社が決めるのか
3. 勤務地の範囲——転居を伴う異動があるか
4. 賃金の決まり方——労使協定方式か、派遣先均等・均衡方式か(=待遇を何を基準に決めるかの2つの方式)
1と2について、派遣だけの専用ルールは無い。会社ごとに違うので、書面で確かめることになる。
ただし、会社の都合で働けない期間については、労働基準法26条の休業手当(平均賃金の60%以上)が問題になりうる。派遣の待機がこれに当たるかは、行政の解釈によるところが大きい。ここでは「問題になりうる」までにとどめる。
出典
- 労働契約法 第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換。第1項=申込みと承諾のみなし、第2項=空白期間による通算の除外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 - 労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令(平成24年厚生労働省令第148号)第1条(無契約期間の基準=直前までの契約期間の2分の1、6か月を上限、1か月未満の端数は1か月に切上げ)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100148 - 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法 第2条第3項(特定有期雇用労働者の定義)、第8条(労働契約法第18条第1項の特例)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000137 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条(雇用安定措置。対象は有期雇用派遣労働者)、第30条の2第1項(無期雇用派遣労働者の定義、教育訓練)、第35条の3(個人単位の期間制限と、40条の2第1項各号の除外)、第40条の2第1項第1号(無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣は期間制限の対象外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088


