「資格取得支援あり」「研修充実」と書いてある会社を選ぶ。その前に知っておくことがある。
教育訓練は、どの派遣会社にも義務になっている。しかも有給・無償が条件になる。
つまり「研修があります」は、選ぶ理由にならない。無い会社は許可を取れないため。
法律が義務づけている
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施しなければならない。
(労働者派遣法第30条の2第1項)
「努めなければならない」ではなく「しなければならない」になっている。
同じ項の後段に、無期雇用派遣の人については「その職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならない」と足されている。
許可の条件になっている
さらに強い仕組みがある。教育訓練の計画が無いと、派遣会社は許可を取れない。
施行規則が、許可の基準をこう定めている。
派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る。)を有すること。
(派遣法施行規則第1条の5第1号)
この「厚生労働大臣が定める基準」が、平成27年厚生労働省告示第391号になる。そこにこう書かれている。
実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。
(同告示 第4号ロ)
有給かつ無償が、許可の条件として明文で置かれていることになる。
5つの要件
厚生労働省の資料は、告示が求める教育訓練計画の要件をこう整理している。
| # | 要件 |
|---|---|
| 1 | 派遣元事業主に雇用されている派遣労働者全員を対象とするものであること |
| 2 | 有給、無償で実施されるものであること |
| 3 | 派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること |
| 4 | 入職時の訓練が含まれたものであること |
| 5 | 無期雇用派遣労働者に対しては、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること |
2がいちばん大事になる。研修の時間には賃金が出る。受講料を取られることもない。
「研修は休みの日に、無給で」と言われたら、この要件に反することになる。
1のとおり、対象は「全員」になる。短時間で働く人も、雇用の見込みが1年未満の人も入る。入職時の訓練は全員に必須とされている。
下の「年8時間」のほうは、フルタイムで1年以上の雇用見込みの人が条件になる。全員が年8時間ではないので、そこは分けて読む。
時間と回数の目安
同じ資料が、時期・頻度・時間数の目安を示している。
| 入職時 | 派遣労働者全員に対して必須 |
|---|---|
| 最初の3年間 | 毎年1回以上の教育訓練の機会の提供が必要 |
| 時間数 | フルタイムで1年以上の雇用見込みの人1人あたり、毎年おおむね8時間以上 |
| 就業時間 | 教育訓練を適切に受講できるよう、就業時間等に配慮しなければならない |
年8時間が目安になる。3年で24時間以上ということになる。
受けていないなら、それは会社の側の問題になる。「忙しくて受けられなかった」で済む話ではない。
受けていないときは、次を確かめる。
1. 教育訓練計画を見せてもらう(契約時までに説明することになっている)
2. 受講の機会がいつあるかを聞く(複数の機会を設けることが求められている)
3. 就業時間の配慮を求める(受講できるよう配慮しなければならない、とされている)
4. それでも動かなければ、都道府県労働局の需給調整事業を担当する窓口に相談する
交通費と、そのほかの留意点
厚労省の資料に、いくつか具体的な記述がある。
| 交通費 | 教育訓練を受けるための交通費が、派遣先との間の交通費よりも高くなる場合は派遣元事業主が負担すべきとされている |
|---|---|
| 計画の明示 | 労働契約の締結時までに教育訓練計画を明示し、事務所に備え付ける等の方法で周知することが望まれる |
| 情報提供 | 教育訓練計画の内容が分かる情報を、インターネットの利用その他適切な方法により提供する必要がある |
| マージン率 | 教育訓練の費用を、派遣料金の引上げではなくマージン率の引上げ・賃金削減で対応することは望ましくないとされている |
計画はインターネットで公開されていることになる。マージン率と同じページに載っていることが多い。
指針が求めていること
派遣元指針(告示)は、さらに踏み込んでいる。
派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約の締結時までに教育訓練計画を説明しなければならないこと。また、(略)当該教育訓練計画に変更があった場合は、その雇用する派遣労働者に対し、速やかにこれを説明しなければならないこと。
(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 第2の2(5)ロ)
契約を結ぶ前に、計画の説明を受けることになっている。説明が無いまま契約しているなら、それ自体が指針に沿っていない。
さらに、受講しやすくすることも求められている。
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が教育訓練計画に基づく教育訓練を受講できるよう配慮しなければならないこと。特に、(略)教育訓練の複数の受講機会を設け、又は開催日時や時間の設定について配慮すること等により、可能な限り派遣労働者が教育訓練を受講しやすくすることが望ましいこと。
(同 ハ)
教育訓練計画とは別に、派遣元が自主的に追加する教育訓練については、費用負担を実費程度とすることが望ましい、とも書かれている(同 ニ)。
派遣先にも義務がある
見落とされやすいが、派遣先の側にも条文がある。
派遣先は、(略)派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事するその雇用する労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、(略)当該派遣労働者に対しても、これを実施する等必要な措置を講じなければならない。
(派遣法第40条第2項)
同じ業務に就いている社員向けの業務研修は、派遣で働く人にも実施しなければならないことになる。社員向けの研修すべて、ではない。同種の業務に必要な能力を付けるためのものに限られる。
条件は2つ。派遣元からの求めがあること、そしてその人が既に能力を持っている場合などを除くこと。
会社を選ぶときに見るところ
「研修あり」では差がつかない。見るのはここになる。
1. 教育訓練計画の中身——公開されているので、選ぶ前に読める
2. 中身が職種に合っているか——介護なら、実技か、資格につながるものか
3. 受講機会が複数あるか(指針が求めている)
4. 資格取得支援の中身——受講料の負担割合、対象となる資格、条件(勤務期間など)
4は、会社独自の上乗せ制度として見ることになる。ここには会社ごとの差がある。資格につながる研修が教育訓練計画に組み込まれていることもあるので、計画の中身と、上乗せの制度の両方を見る。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第30条の2第1項(段階的かつ体系的な教育訓練)、第40条第2項(派遣先の教育訓練の義務)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第1条の5第1号(許可の基準=キャリア形成を支援する制度)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第一条の五第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(平成27年9月29日厚生労働省告示第391号)第4号ロ(有給かつ無償)(厚生労働省法令等データベース・2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ab4925&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省「派遣元事業主の講ずべき措置は・・・」(教育訓練計画の5要件、留意点、交通費、マージン率の扱い。2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000133876.pdf - 山梨労働局「キャリア形成支援制度について」(教育訓練の時期・頻度・時間数=入職時必須、最初の3年間は毎年1回以上、1人あたり毎年おおむね8時間以上。2026年8月25日取得)
https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/content/contents/000399896.pdf - 厚生労働省「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2(5)(教育訓練計画の説明、受講機会への配慮、自主的な教育訓練の費用負担)(2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/content/000920084.pdf


