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働き始めてから

シフトが違う・残業させられる——契約に書いていないことはさせられない

編集部公開 2026年8月25日

聞いていた時間と違う。急に残業を頼まれる。休みのはずの日に呼ばれる。

派遣は、指示を出すのが派遣先、雇っているのが派遣元になる。だから「誰に言えばいいか」が分かりにくい。

先に結論を書くと、残業や休日出勤ができるかどうかは、契約に書いてある。書いていなければ、させられない。

その残業は「法定を超えて」いるか

先に分けておく。

所定の時間契約で決めた時間(例:9時から17時)
法定の時間法律の上限。1日8時間・1週40時間(労働基準法第32条)

契約が7時間なら、8時間まで働いても法定は超えていない。この場合、下の36協定は要らない。ただし契約より延ばすのだから、契約に延長の定めは要る。

法定を超えるときに、下の2つがそろう必要がある。

法定を超えるには、2つそろう必要がある

法定の時間を超えて働かせるには 1 契約に、延長の定めがある 「延長できる時間数」まで書く 派遣法施行規則22条3号 → 明示書にも載る 両方そろって、はじめて 2 36協定が結ばれ、届いている 結ぶのは派遣先ではなく 派遣元の事業場 労基法36条1項 働かせる責任は、派遣先が負う 派遣法44条2項 労働時間・休憩・休日 割増賃金を払うのは派遣元
残業をさせられるには、契約の定めと36協定の両方がそろう必要がある。

1つ目——契約に「延長できる時間数」まで書いてある

派遣の契約に定める事項は法律で決まっている。その中に、こういう項目がある。

派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は……派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合における当該派遣就業をさせることができる日又は延長することができる時間数

(労働者派遣法施行規則第22条第3号)

読み解くと、こうなる。

休日に働かせることがあるならその日を契約に書く
時間を延長することがあるなら延長できる時間数を契約に書く

「残業あり」とだけ書けばよい、ではない。何時間まで延ばせるかを書くことになっている。

逆に言えば、契約に定めが無ければ、延長も休日出勤もさせられない。

そしてこの項目は、就業条件明示書にも載る(同法第26条第1項第10号・第34条第1項)。手元の書面を見れば分かる。

2つ目——派遣元で36協定が結ばれている

法定の時間を超えて働かせるには、労使の協定を結んで届け出る必要がある(労働基準法第36条第1項)。いわゆる36協定になる。

自分に効くのは、派遣元の36協定になる。派遣先に36協定があっても、それは派遣先の社員のための協定になる。

根拠は読み替えになる。派遣法第44条第2項が、労基法36条1項の「当該事業場に」を、こう置き換えている。

派遣元の使用者が、当該派遣元の事業の事業場に

協定の内容は、派遣元に聞けば分かる。届け出た控えは事業場に備え付けられている。

誰の責任になるか

労基法の責任は、派遣元と派遣先で分かれている。派遣法第44条第2項が、派遣先だけを使用者とみなす条文を並べている。

先に結論を書くと、36協定を結ぶのは派遣元、その枠内で実際に働かせる責任は派遣先になる。下の表で近くに並ぶので、混ぜないこと。

何のこと責任を負うのは根拠
労働時間の枠(1日8時間・1週40時間)派遣先労基法32条/派遣法44条2項
週44時間の特例(下記)派遣先労基法40条/同上
休憩派遣先労基法34条/同上
休日派遣先労基法35条/同上
36協定の範囲内で働かせること派遣先労基法36条1項/同上
36協定を結び、届け出ること派遣元労基法36条1項(読み替え)
賃金・割増賃金を払うこと派遣元派遣法44条2項の列挙に入っていない
年次有給休暇派遣元同上

残業を「させる」のは派遣先だが、その分を「払う」のは派遣元になる。ここが分かれているので、言う先も分かれる。

派遣元には「派遣してはならない」義務がある

あまり知られていない条文がある。

派遣元の使用者は、労働者派遣をする場合であつて、(略)当該労働者派遣に係る労働者派遣契約に定める派遣就業の条件に従つて当該労働者派遣に係る派遣労働者を労働させたならば、(略)労働基準法令の規定に抵触することとなるときにおいては、当該労働者派遣をしてはならない。

(労働者派遣法第44条第3項)

契約どおりに働かせると労基法に触れる、という契約なら、派遣元はそもそも派遣してはいけないことになる。

しかも同条第4項で、これに違反した派遣元は労基法に違反したものとみなして罰則を適用すると定められている。

つまり派遣元は、「指示したのは派遣先だから」では済まない立場に置かれている。派遣元に言う根拠がここにある。

休憩と休日は、条文で数字が決まっている

条文が決めていること
休憩労働時間が6時間を超えるなら少なくとも45分、8時間を超えるなら少なくとも1時間。労働時間の途中に与える(労基法34条1項)
休憩の使い方自由に利用させなければならない(同条3項)。電話番をさせるなら休憩ではない
休日毎週少なくとも1回。または4週間を通じて4日以上(労基法35条)

与えるのは派遣先になる(派遣法44条2項)。

介護の小さな事業所は「週44時間」のことがある

1週40時間には特例がある。保健衛生の事業(労基法別表第一第13号)などで、常時10人未満の労働者を使う事業場は、こうなる。

法第三十二条の規定にかかわらず、一週間について四十四時間、一日について八時間まで労働させることができる

(労働基準法施行規則第25条の2第1項)

介護や医療の事業所は、この「保健衛生の事業」に当たる。小規模なデイサービスやグループホームが派遣先なら、1週の枠が44時間ということがある。

1日8時間は変わらない。変わるのは週の枠だけになる。

この特例を守る責任も派遣先になる(労基法40条/派遣法44条2項)。

割増はいくらか

払うのは派遣元だが、率は労基法が決めている。

どの労働か割増の率条文
法定時間外2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上労基法37条1項
法定時間外が1か月60時間を超えた分5割以上同項ただし書
深夜(22時から翌5時)2割5分以上同条4項
法定休日3割5分以上同条1項・平成6年政令第5号

深夜と時間外は重なる。22時以降の残業なら、両方が付く。

家族手当・通勤手当などは、割増の計算の基礎に入れないと定められている(同条5項)。

上限は何時間か

36協定があっても、無制限ではない。

上限
原則1か月45時間・1年360時間(労基法36条4項)
臨時的な特別の事情があるとき1か月100時間未満(休日労働を含む)・1年720時間まで(同条5項)
45時間を超えられる月数1年について6か月以内(同項)

さらに、協定があっても実際の労働時間そのものに上限がかかる(労基法36条6項)。

上限
1か月(時間外+休日労働)100時間未満(同項2号)
2か月から6か月の平均(時間外+休日労働)1か月あたり80時間以内(同項3号)

この6項も、派遣先が守る責任になる(派遣法44条2項が36条1項と6項の両方を挙げているため)。

「100時間まで働かせてよい」ではない。臨時的で、通常予見できない業務量の大幅な増加などがある場合に限られる、と条文に書かれている。

シフトそのものが違うとき

残業ではなく、始業・終業の時刻や、働く日そのものが話と違うことがある。見るところは同じになる。

手元の書面に書いてあるもの根拠
派遣就業をする日派遣法26条1項4号
派遣就業の開始と終了の時刻、休憩時間同項5号

明示書に書かれた時刻・日と違うなら、それが起点になる。「聞いていた話と違う」ではなく「書面と違う」と言えることになる。

ただし、複数のシフトが明示されていることがある(早番・遅番・夜勤など)。その範囲の中で組まれているなら、書面とは違っていない。まず何が書いてあるかを確かめる。

順番

1. 就業条件明示書を見る。開始・終了の時刻、休憩、就業する日、延長できる時間数が書いてある

2. 書いてあることと違うなら、派遣元の担当に、書面と違うと伝える

3. 動かないなら、苦情の申出先(派遣元・派遣先の両方にある。明示書に記載)に言う

4. それでも変わらないなら、外の窓口へ

メモは日付で残す。「◯月◯日、終業19時のところ21時まで」という形になる。勤務表やタイムカードの写しがあれば、そのまま材料になる。

聞いていた条件と違うとき

明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除することができる(労働基準法第15条第2項)。

勤務時間が明示と違えば、これに当たりうる。

先に訂正を求めなければならない、という決まりは無い。ただし実務としては、まず直してもらうほうが早い。続けたいのに辞めることになるのは望む結果ではないため。

外の窓口

どこ何を扱うか
労働基準監督署労働時間・休憩・休日・割増賃金。行政指導の権限がある
都道府県労働局の需給調整事業部(課)契約に無い条件で働かせている、苦情処理が動かないなど
総合労働相談コーナー(全国378か所)どこに行くか分からないとき。無料・予約不要

労働時間の話なら、労働基準監督署が直接の窓口になる。派遣先が働かせた分でも、申告先は監督署になる。

出典

  • 労働基準法 第32条(労働時間)、第34条(休憩)、第35条(休日)、第36条(時間外及び休日の労働。第1項・第4項・第5項・第6項)、第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、第40条(労働時間及び休憩の特例)、第41条、第15条第2項(明示された労働条件が事実と相違する場合の即時解除)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • 労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号。時間外=2割5分、休日=3割5分)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第26条第1項第10号(契約に定める事項)、第34条第1項(就業条件等の明示)、第44条第2項(労働基準法の適用に関する特例)、第44条第3項・第4項(労働基準法令に抵触する派遣の禁止と罰則の適用)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第22条第3号(派遣就業をさせることができる日・延長することができる時間数)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020
  • 労働基準法施行規則 第25条の2第1項(週44時間の特例。別表第一第13号=保健衛生の事業などで常時10人未満)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
  • 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(設置か所数、無料・予約不要。2026年8月25日取得)
    https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

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