医療事務は、病院・診療所でも派遣で働ける。看護師の派遣が原則できないのと対照的になる。
理由は資格の有無ではない。その仕事が、法律の定める8業務に当たらないからになる。
8業務に入っていない
派遣が禁止される医療関係の業務は、政令が8つ挙げている。
| # | 業務 |
|---|---|
| 一 | 医師の医業 |
| 二 | 歯科医師の歯科医業 |
| 三 | 薬剤師の調剤 |
| 四 | 保健師・助産師・看護師・准看護師の業務 |
| 五 | 栄養士の業務(療養のための栄養指導) |
| 六 | 歯科衛生士の業務 |
| 七 | 診療放射線技師の業務 |
| 八 | 歯科技工士の業務 |
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令 第2条第1項)
医療事務は、このどれにも入っていない。 だから病院でも派遣できる。
線を引いているのは「資格を持っているか」ではなく「その業務が8つに当たるか」になる。臨床検査技師も入っていないので、病院で派遣できることになる。
医療事務の仕事の範囲
「医療事務」を定義した条文は見当たらなかった。 8業務に入っていないので、派遣法の側からは特に規定が置かれていない。
実務で呼ばれる範囲は、おおむね次のようになる。
| 受付・会計 | 患者の応対、保険証の確認、窓口での会計 |
|---|---|
| レセプト業務 | 診療報酬明細書の作成・点検・請求 |
| クラーク | 診療に付随する事務。書類の準備、データの入力 |
求人票の「医療事務」だけでは、どれをするか決まらない。就業条件明示書の「業務の内容」で確かめることになる。
線を越える指示に注意する
事務として入っても、人手が足りない場面で線を越えた依頼が来ることがある。
| 頼まれること | どうなるか |
|---|---|
| 患者の誘導、車椅子を押す | 事務の範囲を超えるかは、契約の記載による |
| 採血、注射、点滴 | 看護師の業務。事務職員はできない |
| 薬を渡す、飲み方を説明する | 医師の指示がある場合を除き、看護師でさえ制限されている(保助看法37条) |
契約に無い業務を指示されているなら、それ自体が問題になる。就業条件明示書と照らして、派遣元に伝える。
単発(日雇い)で働けるか
派遣で日雇い(日々または30日以内の期間を定めて結ぶ雇用契約)は原則禁止されているが、政令が挙げる業務なら例外になる(派遣法35条の4第1項)。
その例外リスト(施行令4条1項)に、事務系の業務がいくつも入っている。
| # | 業務 |
|---|---|
| 三 | 電子計算機、タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器の操作の業務 |
| 六 | 文書、磁気テープ等のファイリング(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る)の業務 |
| 八 | 貸借対照表、損益計算書等の財務に関する書類の作成その他財務の処理の業務 |
| 十二 | 建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務 |
医療事務の実務がこのどれに当たるかは、業務の中身による。「医療事務」という名前では判定できない。
同じリストの19号に、看護師の業務が入っている。ただし括弧書きで病院等・助産所・介護老人保健施設・介護医療院・居宅で行われるものを除くとされている。つまり病院で看護師が単発で働くことは、二重に制限されていることになる。
単発の可否には、2つの軸がある。
| 軸 | 中身 |
|---|---|
| 業務の例外 | その仕事が施行令4条1項の業務に当たるか(上の表) |
| 人の例外 | 60歳以上、学生、副業で一定の収入がある人など |
どちらかに当たれば単発で働ける。詳しい要件は単発の記事で扱っている。
賃金の目安
労使協定方式(賃金の決め方の1つ。国が示す水準が下限になる)の場合、職種ごとの基準値がある。
通達の表には医療事務の区分がある。
| 職種番号 | 職種 | 能力・経験0年 | 3年 | 10年 | 20年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 037 | 医療・介護事務の職業 | 1,070 | 1,335 | 1,527 | 1,898 |
| 03701 | 医療事務員(調剤薬局を除く) | 1,071 | 1,337 | 1,528 | 1,900 |
| 03702 | 調剤薬局事務員 | 1,057 | 1,319 | 1,508 | 1,875 |
| 03703 | 介護事務員 | 1,107 | 1,382 | 1,580 | 1,964 |
(単位=円・時給。令和8年度の職業安定局長通達。地域指数をかける前の額)
通達の表は2系統ある。 上は職業安定業務統計(ハローワークの求人)をもとにしたもので、看護師や介護職員の表は賃金構造基本統計調査をもとにしたものになる。どちらの系統のどの区分を当てるかは、労使協定で決まる。協定を見れば分かる。
探すときに確かめること
1. 業務の内容(受付・会計か、レセプトか、クラークか)
2. 配属先(外来、病棟、健診センターなどで中身が違う)
3. レセプト期間の残業(月初に集中することがある)
4. 経験や資格を求められるか(医療事務の資格は民間資格になる)
5. どの職種区分で賃金が計算されているか(労使協定方式の場合)
4は誤解されやすい。 医療事務に国家資格は無い。民間の資格はあるが、それが無いと働けないという法律上の制限は見当たらなかった。
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第35条の4第1項(日雇い労働者についての労働者派遣の禁止と例外)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令 第2条第1項(派遣が禁止される医療関係の8業務)、第4条第1項(日雇い派遣の例外業務。第3号=事務用機器の操作、第6号=ファイリング、第8号=財務書類の作成、第12号=建築物における来訪者の受付又は案内、第19号=保助看法5条の業務で病院等以外のもの)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/361CO0000000095 - 保健師助産師看護師法 第37条(医師等の指示がない場合の制限)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203 - 厚生労働省職業安定局長「令和8年度の一般賃金等について」(職発0825第1号・令和7年8月25日)(2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/content/001547248.pdf


