看護師の派遣は、病院では原則できない。看護助手はできる。 同じ病院の中で、扱いが分かれる。
理由は、看護助手が看護師の業務をしないからになる。ここを条文で押さえると、求人の見方も、現場で断るべき指示も分かる。
看護助手は、看護職員の指導の下で補助を担う職種になる。医療の現場では「看護補助者」と呼ばれる。
看護師の業務は、条文で決まっている
この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
(保健師助産師看護師法第5条)
そして、それを他の人がすることは禁じられている。
看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。
(同法第31条第1項)
「療養上の世話」と「診療の補助」の2つが、看護師でなければできない業務になる。
准看護師は、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて同じことを行う(同法6条・32条)。
だから、看護助手は病院で派遣できる
派遣が禁止される医療関係の8業務のうち、看護に関わるのは第4号になる。
四 保健師助産師看護師法第二条、第三条、第五条、第六条及び第三十一条第二項に規定する業務(略)
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令 第2条第1項第4号)
禁止されているのは「保助看法5条・6条に規定する業務」になる。看護助手はこれを行わないので、8業務のどれにも当たらない。
だから病院・診療所でも、看護助手として派遣で働ける。医療事務も同じ理由になる。
線を越える指示は断る
現場では、人手が足りないときに線を越えた指示が出ることがある。看護助手が「療養上の世話」や「診療の補助」をすれば、保助看法31条1項に触れることになる。
指示した側だけの問題ではない。条文は「看護師でない者は(略)してはならない」と、行う人を名指ししている。
断るときの言い方
「できません」だけでは角が立つ。根拠と、代わりにできることを添える。
| 言い方 |
|---|
| 「それは看護師さんの業務なので、私はできません。呼んできます」 |
| 「契約に入っていない業務なので、派遣元に確認させてください」 |
契約に無い業務を指示されているなら、それ自体が別の問題になる。就業条件明示書の「業務の内容」と照らす。
繰り返されるなら、苦情の申出先(派遣元・派遣先の両方にある)に伝える。
何をする仕事なのか——厚労省の記述
条文は「療養上の世話又は診療の補助」としか書いておらず、具体的な行為を挙げていない。
ただし、診療報酬の施設基準を定めた厚生労働省の通知に、看護補助者の業務が書かれている。
看護補助者は、看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)、病室内の環境整備やベッドメーキングのほか、病棟内において、看護用品及び消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理及び作成の代行、診療録の準備等の業務を行うこととする。
(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて・令和2年3月5日保医発0305第2号 別添2第2の4(6)イ)
「看護師長及び看護職員の指導の下に」が前提になっている。独立して判断する仕事ではない。
「療養生活上の世話」と、看護師の独占業務である「療養上の世話」は、字が似ていて紛らわしい。 この通知が挙げているのは食事・清潔・排泄・入浴・移動といった生活の援助で、看護職員の指導の下で行うものになる。どこまでが指導の下の補助で、どこからが看護師の判断を要する行為かは、現場の状況による。
だから就業前に、その病院での業務範囲を文書で示してもらうことになる。院内の規程や業務分担表があることが多い。
医薬品と診療機械について
条文にはっきり書かれているものが1つある。
保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。
(保健師助産師看護師法第37条)
「医薬品を授与し」は、患者に薬を渡すこと。「医薬品について指示をし」は、その使い方を指示することになる。
看護師でさえ、医師の指示なしにはできないと定められている行為になる。看護助手が求められる場面ではない。
求人を見るときに確かめること
1. 業務の内容(就業条件明示書の記載。抽象的なら具体化してもらう)
2. 配属される部署(病棟、外来、手術室、検査部門などで中身が違う)
3. 夜勤の有無
4. できない業務の一覧があるか(派遣先が作っていることがある)
5. 無資格でよいか(求人によっては資格や経験を求める)
1と4はセットで確かめる。 「看護助手」という職名だけでは、何をするかが決まらない。
確かめる先は3つある。派遣元(契約の内容)、派遣先(実際の業務範囲)、そして院内の規程・業務分担表になる。
賃金の目安
労使協定方式の場合、国が示す一般賃金の基準値がある。
| 職種番号 | 職種 | 能力・経験0年 | 3年 | 10年 | 20年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1371 | 看護助手 | 1,031 | 1,287 | 1,471 | 1,829 |
| 1133 | 看護師 | 1,487 | 1,856 | 2,122 | 2,638 |
(単位=円・時給。令和8年度の職業安定局長通達。地域指数をかける前の額)
勤続0年で456円の差がある。免許の有無が反映された形になる。
これは下限になる。実際の時給がこれと同じとは限らない。また、この表が使われるのは労使協定方式の場合になる。
出典
- 保健師助産師看護師法 第5条(看護師の定義=療養上の世話又は診療の補助)、第6条(准看護師)、第31条第1項(看護師でない者の業務の禁止)、第32条(准看護師でない者の業務の禁止)、第37条(医師等の指示がない場合の制限)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203 - 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令 第2条第1項第4号(派遣が禁止される業務=保助看法5条・6条等に規定する業務)(e-Gov法令検索・2026年8月25日取得)
https://laws.e-gov.go.jp/law/361CO0000000095 - 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和2年3月5日保医発0305第2号)別添2第2の4(6)イ(看護補助者の業務)(厚生労働省法令等データベース・2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4895&dataType=1&pageNo=1 - 厚生労働省職業安定局長「令和8年度の一般賃金等について」(職発0825第1号・令和7年8月25日。職種番号1371・1133の基準値)(2026年8月25日取得)
https://www.mhlw.go.jp/content/001547248.pdf


